二刀流だったらよかったのに

@mia

第1話

 父を始め父方の親せきはみんな辛党だ。

 辛党といっても甘いお菓子を全然食べない訳じゃない。

 訪問先でケーキ出されたり、会社で旅行に行った人がお土産にお菓子を配ったりしたのはちゃんと食べる。でも、お土産が個別包装の場合は家に持ち帰って、姉や僕にくれた。

 相手に失礼にならないようにはしている、と父はよく言っていた。


 母を始め母方の親せきはみんな甘党だ。

 甘党といってもお酒を全然受け付けない訳じゃない。

 お菓子を作るときに、ラム酒入れたり、ブランデー入れたりしていたし、料理にも日本酒やワインなど使っていた。


 姉は幼いころから、甘いものが大好きだった。

 お菓子を買ってほしくてスーパーで寝転がってぐずるという荒業を使ったこともある。

 父には「ママに似たんだな」と言われてたが、未就学児が父に似ていたら大問題だと思う。

 

 姉の二十歳の誕生日のお祝いに父は姉の生まれ年のワインをプレゼントした。

 姉は喜んで飲んでいた。

 姉はたまに父を誘って飲みに行っている。

 もちろん、甘いお菓子も大好きなままだ。

 甘いお菓子でお酒を飲めるのが姉だ。

 姉は父、母の両方とも受け継いでいた。


 それに引き替え、僕は甘いお菓子に執着はなかった。

 おやつに出されれば食べるが、おなかがすいたから食べるだけで姉みたいにそれじゃないと嫌だというのはなかった。

 僕はおやつにトマト一個丸かじりでも文句はなかったが、姉のように母と似ていたらよかったのにと思っていた。


 僕の二十歳の誕生日にも父は生まれ年のワインをプレゼントしてくれた。

 ありがたく飲んだが、プレゼントだから、それだけだった。

 姉みたいに外で飲むのはきつかったので、たまに家での晩酌に付き合った。

 それだけでも喜ぶ父に、なんだか申し訳ない気持ちになった。


 僕はネットであるものを手に入れた。


 あれから三十年以上たち、父が三年八か月の闘病の末亡くなった。

 

 葬儀の後、ずっと持っていた遺伝子検査キットを捨てた。



 

 

 

 


 

 

 

 

 

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