KAC20223 “第六感”
――冷たい夜風が、酒で火照った身体を吹き抜ける――
赤い提灯をぶら下げた屋台で、猫田さんと2人で気持ちよく飲んだ帰り道のこと
猫田さんと待ち合わせる前に、購入しておいた最新型
鼻を近づけては
その横では、“ほろほろ”と暗い夜道を歩いく猫田さんが、
「どうも、誰かにつけられておるな」
「そうですか?」
「おいの第六感わァ……。必ず
と嘘くさい感じで言われたので、愛想笑いで振り返ると……奴らが居ました
ひぃ、ふぅ、みぃ・・・。全部で、5人ですな
「猫田さん。ちょっと、そこに寄りましょうか?」
吾人は、泥酔した猫田さんを新築中のテナントビルへ急ぎ立てました
◇
下水処理と、ビルの骨組みが半分くらいは出来上がった感じでしょうか?
資材はあちこちに置かれた状態で、ペットボトルなどのゴミも放置された状態です
「おいは、まだ飲めらんゾ! 17合だろうが、18合だろうが! 赤子同然よ…
ぶわっはっはっ! 」
「ははははは。だいぶ酔っておられますな。
それじゃあ。ここへ座って、酔いを少し醒ましましょうか?」
「……ありゃ? ナベさん。あんた、随分と背が
「猫田さん。それは、〔
そういうと、
それから手ごろな鉄パイプをおもむろに抜き取ると―――
「さて、アチラさんもお待ちかねでしょう」
◇
「こんな老いぼれに、いったいなんのようですかな?」
「なんじゃわれ。ワシらに、気づいとったんかい?」
中年男たちが、チンピラのような雰囲気を醸しつつ、
「あんさんが持っとる、〔
「はぁ、あれですか?」
「そうじゃ。それをよこしてもらおか」
「笑わせるな、若造が…」
「おい、ジジィ! やんのか、コラ?」
「それ、もうオレらのだから。さっさと置いて消えろよ」
などと、若い衆が言いたい放題。
「やれやれ。バッターボックスに入るのも久しぶりだな」
「ずいぶんと、面白い格好をとる奴じゃのお
そんなに野球がしたいんなら、コイツでも喰らうか?」
すると、リーダーっぽい男が、だぼったい服の下から何かを取り出した
それは、市街から差す光に照らされて、黒い物体が姿を晒すようでした
「
「そんな物を鳴らすと、すぐに警察が駆けつけてくるぞ」
「心配すんなや。最近の拳銃は、随分と音が小さぁ、なっとるからな」
「ほら、さっさと消えろよ」
「あぁ、そうかい。ほなら、脚の1本でも
――― パキンッ!! ―――
乾いた音と同時に、金属同士が打ち合う音が
「な、なんじゃそりゃ?
「やべぇ。“
「ぐ…、偶然だろ………?」
などと、口々に開く
「何だったら、もっぺんやってみるか?」
「あんさん。いったい何者なんじゃ?」
「ただの、元・メジャーリーガーだよ」
満面の笑みを浮かべ、調子に乗って大きく鉄パイプ振りかぶったッ――!
勢いよく振り上げられたそれは……
なんと、手元からすっぽ抜けて、猫田さんの頭に直撃してしまった!?
――― ドガッ ―――
大きな音が、後方に座っていた巨体を卑しくも沈める
「猫田さん? どうしました? ねこたさぁあああんんんッ!!!」
「「「「「…………………」」」」」
突然起きた事案に、誰しもが、言葉を失った・・・
「………。そ、
それじゃあ、みんなで埋めようか?」
開口したのは、
「やばい やばい」
「で、で、でがッ?!」
「おい、逃げるぞ」
「鬼ヤバじゃん!」
〔
皆に裏切られてしまった
工事現場の出入り口まで戻って行きました
そして、動かなくなった『ダイヤモンド 猫田』へと、敬礼を送った
そりゃもう、たいそう綺麗な敬礼だったそうな……
「現場からは、以上ですッ!」
いやぁ、本当に。生きた
猫田さんが、あの日の事案を 未だに根に持っていようとは……
◇
まさか――
こんな老いぼれた2人が、あのような事件に巻き込まれてしまうとは……
苦労なんぞ、したくはなかったのですがねぇ……
了
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