僕は魔法剣士

シュタ・カリーナ

第1話

 僕が10歳の時、剣に魔法を付与する魔法剣という技術を開発した。これは、僕は元々魔法と剣術の二つが得意だったので、二つ合わせれば強いのでは?と考えた末の技術だ。


 あくまで本だけの知識だがこの世界に魔法剣という技術は存在しない。だから僕が世界で初めて魔法剣の技術を作り上げた祖ということになる。もしかしたら魔法剣をもっと広めれば僕は偉大な人物になれるかもしれない。


 しかしこの魔法剣にはいくつもの問題があった。

 一つは魔法と剣術のの才能がないと意味がないという点だ。魔法剣は炎を纏わせたり、切れ味をよくしたりなど様々な魔法を剣に付与し、それを用いて戦うのだ。付与する魔法の技術はもちろん、剣の技術も必要である。

 もう一つは今のままでは効率が悪いという点だ。今はただ単に剣に魔法を纏わせているだけだ。より効率的になれば魔力の消費を今以上に抑えることができるし、実用的になる。

 それらの問題を解決するにはどのように付与すべきか……。


 僕は子供の頃魔法剣の研究に熱中していた。




 ――そして時は経ち15歳になった。

 魔法剣はなんとか実用的な形になった。最初はただの魔法を剣に纏わせていたが、魔法を術式化しそれを剣に刻むことでより効率的に魔法を付与することができることに気がついた。魔法を術式化することはもしかした教会ではタブーとされていることかもしれない。なにせ魔法は神が人に授けた神秘の一つとされているのだから、それを改変することは悪いことなのかもしれない。だが僕や僕の周りの人は熱心な信者というわけでもなかったし特に何も言われることはなかった。

 ちなみにだがこの魔法の術式化――これを“魔術”と呼ぶ――、世界で初めて試みである。魔法剣の研究をしていたら魔術の祖にもなってしまったのである。だが僕はまだこの魔術の技術を公表していない。なにせまだ研究の途中である。だがいずれは公表していこうとは思っている。


 またこの五年間魔物を倒すために冒険者になってみたが今ではBランクの上級冒険者。齢15にしてBランクは相当珍しいようで僕の住んでいる街ではもはや有名人となった。


 そんな中、僕は父にエレファレス王立学園に通ってはどうかと提案をされた。

 エレファレス王立学園とは剣術や魔法、体術などの戦闘技術から、医療や化学、商売ありとあらゆる技術を学び、研究する学校で15歳から入学でき基本四年間、さらに学んだり研究したいのであれば更に四年間在学できる。

 その学園は世界最大の学校で僕の魔法剣や魔術もより洗練させることができるだろう。

 僕は冒険者として稼いだお金を使ってエレファレス王立学園に入学することにした。


◇◇◇


「ここが私の晴れの舞台ね!」


 私はエレファレス王立学園の門の前に立ちこれからの学園生活心が躍っていた。今日はまだ入学試験の日だが私は絶対に入学できるという自信があった。

 なぜなら私はBランクの冒険者でもあるからだ。私は剣術が得意で冒険者に登録できる10歳から冒険者になり魔物を倒して剣術を鍛えてきた。お陰で今ではBランクである。15歳でBランクになれるのは物凄いことなのだ。

 私の住んでいた田舎町では私は英雄の卵のように扱われてきた。だからきっとこの学園でも私は英雄の卵のように扱われ夢の剣聖(最も強い剣士の称号)にだってなれるかもしれない。

 私は意気揚々と門をくぐり試験会場に向かう。


 私は「すごい!」「天才だ!」と持て囃されるのだと、そう思っていた。


「すごい! なんだこれは!」

「剣に魔法を付与してあるだと!?」

「剣だけでなく魔法も扱えるのか!?」


 単純な剣術と魔法を放ちその後、魔法が付与されたらしい剣で的である人形を斬り伏せる。その威力は驚愕の一言でBランクの私ですら見劣りするような技だった。

 どうやら彼が言うには付与された剣を魔法剣と呼び、剣に付与した魔法は魔術という魔法を術式化させたものだそうだ。魔術は彼が実際にその場で単体で放ってみせ、無詠唱で発動させ試験官たちを驚かせていた。しかもその二つの技術は彼が一人で開発したものだそうだ。

 試験官たちは試験そっちのけで彼に詰め寄っていた。そして彼はまだ筆記試験が残されているにも関わらず試験官にどこかへ連れて行かれた。

 そしてようやく試験が再開するも試験官や受験生たちの熱が冷めることはなく先ほどの魔法剣や魔術に興味津々であった。


 その後私は剣術科に首席で入学することができた。当然である。

 一方例の彼はと言うと特待生として入学することになった。特待生は本来学校長や著名な剣士や魔法使いのような人から推薦されて入学し、学費免除などの優遇を受けることができる制度だが、以前に特待生が入ったのは28年前のことだそうだ。しかも今回は誰からの推薦でもないと言う点でも注目を集めており、500年に一人の天才だと持て囃されている。

 私も持て囃されたがやはり彼の前では霞んでしまう。

 彼は魔法と剣が得意だ。それなら私は剣一本で彼よりすごい人になってやろうと決意する。



 彼と彼女が良きライバルとなるのはもう少し先のお話。

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