『鎧』VS『狼』①
策は大体決まった。
基本はヒットアンドアウェイのスタイルで行く。
持久戦にしようと思ったのだが『スタミナ』ことSPをあいつらは無限に持っている。
しかも、俺には体力の限界がある。
それならば短期決戦で行く。
それでも命が最優先。
ヒットアンドアウェイ作戦はそのままだ。
行くか!
扉に向かって進む。
扉にもう少しで届く位の距離で微動だにしていなかったリビングアーマー達が動き始め、今入ってきた扉が閉まる。
やっぱり逃げさせてはくれないか。
鎧の方は俺に近づき、魔法使いの方は逆に離れる。
鎧騎士は少し近付いて来た後、俺を睨んだままで微動だにしない。
気の緩む一瞬を逃すまいとしている様にも見える。
本来なら俺もそうするべきなのだろうが、俺は相手を取りに速攻で挑む。
初手から全力で近づき、ガラ空きの腹部の鎧の隙間に剣を差し込む。
手に『鎧の中の何か』を刺した感触が直に伝わる。
——どうだ!—
これなら相手の虚をつきつつ、まどろっこしい先手の取り合いをしなくても済み、更に魔法使いのチャージもさせなくする!
そう、これぞまさに一石三鳥だ!
即座に剣を引き抜き、距離を取る。
と同時に鎧騎士の大盾が振り下ろされ、一瞬前の自分を押し潰す。
先手は取れたが、直ぐに魔法使いの方から嫌な気配を感じ、すぐさま横に飛び退いた。
魔法の気配なんてないって思ってたけど魔法が来そうになると体の毛ががゾワってする。
前のベヒモスの大地魔法。規模は小さいが、あれの時に感じた物に似た感じだ。
多分、直感の効果も少なからず有るだろう。
真っ直ぐに飛んで来る高圧の水槍を躱す。
点での攻撃なので来る事が分かっていれば簡単に避けられる。
が…その回避先に剣閃が走る。
——ここに避けるのは読まれてたか!—
即座に盾を作り相手の剣を受け流し、ついでにと剣を振るうが回避後なので力が入らず、しかも盾に防がれたのでダメージを喰らった様子はない。
また距離を取る。
水晶武具生成はMPを少し多く消費するが、細かい所まで考えずに武器を出せる。
出来るなら必要最低限のみ作りたいが、緊急時には使える。
遅れて冷や汗が出て来る。
今回は水晶武具自動生成が無ければ危なかった。
怖い。
少し間違えただけで死んでしまうかもしれない。
今すぐにでも逃げたい。
でも、ここでずっと燻ってる訳にも、死ぬ訳にもいかない!
グッと剣を噛み締める。
少し気が楽になった気がする。
鎧騎士がまた攻撃を仕掛けて来る。
何と無く来ると分かってたから簡単に避けられた。
今度は横薙だ。
上に小さく飛び、薙いだ直後の切り上げを盾を真下に作ってガードする。
今度は小さいが、その分硬く作り、突き破られる事は無かった。
まあ結構MP使ったけどね。
衝撃までは殺せず、盾と共に打ち上げられる
その打ち上げられた勢いのまま、更に上に飛び上がる。
また魔法を撃って来そうだった魔法使いの方は死角から温存しておいたクリスタルアローを撃って体勢を崩させる。
俺が遠距離攻撃をするとは知っていなかったからか、アッサリと体勢を崩してくれた。
この間に鎧騎士を戦闘不能にしておきたい。
きっと次に同じ手は通用しないと思った方が良いだろう。
眼の前の兜とチェストプレートの小さな隙間、首の部分に向けて剣を振るう。
ここならダメージも大きいはずだ!
—ヴヴうう!!——
剣を咥えているので吠える事はできないが、その代わりに唸り声を上げる。
入った!
更に深く、鋭く、力強く斬り込む。
首元の俺の向かって剣が振られようとするが、鎧の関節部分に水晶をはめ込む様に生成して時間を稼ぎにしかならないが動きを阻害する。
今までで文句無しの一番の手応えを感じる。
やったか!?
…あっ、これフラグだ。
やっちまったかも。
ちゃんと倒せてる?
ガシャガシャと音を立てながら中身を失った鎧が水浸しの地面に崩れ落ちた。
フラグは回収される事無く鎧騎士は倒せた様だ。
…ん?
水浸し?
その瞬間、地面が一瞬にして凍りついた。
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