#114 目的を決めよう

「しかしまぁ、アレだ。なんとも変な顔ぶれだぜ」


 親方ダーヴィドが腕を組んで唸る。大半を占める銀鳳騎士団に所属している者たちは見慣れた顔なのであるが、そうではない者たちが独特すぎた。

 その一人である巨人族アストラガリの少女、小魔導師パールヴァ・マーガは神妙な様子で座り込んでいた。

 場の主体は小鬼族ゴブリン(彼女から見れば、広く銀鳳騎士団も含まれている)にあると考えているようだ。


「巨人……か。驚くべき存在だが、言葉が通じれば手を取り合うこともできる。魔獣とは違うのだからな」


 エドガーが彼女のことを見上げる。その隣で、壁にもたれかかったディートリヒが言った。


「今後のことねぇ。率直に言って、我々としてはエルネスティを見つけた以上、速やかに帰りたいところだけど」


 銀鳳騎士団の団員たちがそろって同意を示す。彼らは小さな騎士団長を追ってここまでやってきた。主目的はすでに果たし終えたと言えよう。


「お待ちください」


 そこに待ったの声をあげたのは、見慣れない装いの騎士であった。彼の装備は獣の毛皮と甲殻と組み合わせて作られており、布などの素材が少ない。意匠もフレメヴィーラ王国をはじめとした西方ではあまり見ない形で構成されている。

 小鬼族の騎士、ザカライアだ。


「西の民よ。空飛ぶ船と、伝説にある幻晶騎士シルエットナイトを携えた戦士たちよ。あなたがたに、是非ともお願いしたいことがあります。どうか、まずは話だけでも聞いていただけないでしょうか」


 この場にいる小鬼族は彼、ただ一人。ここで銀鳳騎士団を説得できるかどうかによって、今後の小鬼族が辿る道は大きく変わってしまうことだろう。生真面目そうな顔つきには今、強い使命感が浮かび上がっていた。


 団員たちが顔を見合わせている中、ディートリヒが無言で続きを促す。


「既にお聞き及びの通り、小鬼族と呼ばれる我々は、かつて森伐しんばつ遠征軍と呼ばれた者たちの末裔です。古の企みは失敗に終わり、私たちのおやは巨人たちの隷下となることで生きながらえた。魔獣に満ちた森の中で生きるには、他に選択肢はありませんでした」


 ザカライアは一同を見回し、切々と語る。


「長い時を、我々は耐え抜いてきた。だがそれは永遠ではない。今これから、歴史を変えたいと願っています。巨人族における戦い、ルーベル氏族の驕り……。まさに時は満ちた、この機を逃すわけにはまいりません。だからこそ是非とも、古き同胞である皆さまのお力添えをいただきたいのです。ここにはそれを可能とするだけの、力がある!」


 彼の熱弁を聞いて団員たちが囁き合う。

 訴えは真に迫っているが、即断するには至らなかった。何よりも彼らは、小鬼族の生活を直に目にしたわけではない。言葉にこもる熱意は、共有されきっていなかった。


「君たちが確かに森伐遠征軍の末裔であり。さらに、苦しんでいるというのも本当ならば力を貸したいところではあるが……」


 エドガーは煮え切らない様子で隣を見上げた。小魔導師は何を考えているのか、ゆっくりと四つの視線を巡らせているだけだ。

 巨人を相手にしての戦い、彼はまだその点にも実感が持てていない。巨人の存在そのものは驚異的だったが、出会った最初の一人である小魔導師への印象が悪くなかったことが、大きく影響しているのだった。


「だ、そうだが。どうするんだい? 騎士団長エルネスティ。君は巨人族も小鬼族も、目にしてきたのだろう。そのうえでの判断を聞きたい」

「はい。僕は戦いに加わります」


 エルネスティのさらりとした答えを聞いて、ディートリヒは僅かに目を細めた。否定的な色合いがあるわけではない。彼は壁から背を離すと。


「まぁ、予想はしていたよ。そもそも君は巨人のお嬢さんと一緒にいたわけだしね。ならば是非もないさ、我々銀鳳騎士団は団長の意志に……」

「いいえ、待ってください」


 結論を述べようとしたところで、彼の言葉をエルが遮った。目を瞬かせるディートリヒに向かって、エルはきっぱりと言い切る。


「巨人族の戦いに参加するのは、僕とアディだけです。皆が加わる必要はありません」


 呆気にとられたような空気が、船倉を駆け抜けていった。

 まん丸に目を見開いて、ディートリヒはエルの顔を見つめたまま固まっている。先に動き出したのはエドガーだった。


「……どういうことだ、エルネスティ?」

「そうだ。いつもみてぇに皆をつれてけよ。だいたい俺たちが、おめぇを放っておけるわけねぇだろ」


 親方も、ぎょっとした表情で慌てていた。

 銀鳳騎士団はエルネスティのために創設された集団である。戦闘に、技術に。彼が示した方向へと、騎士団がついてくる。それがこれまでの形であったはずだ。

 エルは少し考えてから、顔を上げた。


「森に墜ちたあと、僕たちは巨人族と、小魔導師たちと出会いました。すったもんだとありましたけれど、力を貸し合って森で生き延びてきた」


 振り返り、小魔導師を見上げる。彼女の四つの瞳が、静かに彼を見つめていた。


「ルーベル氏族との戦いは、元は巨人族内部の争いです。小魔導師たちだって、僕たちに戦えとは言いませんでしたしね。でも、僕にも許せないことはある。借りは返す、戦う理由があるのです。ですがそれは皆の与り知らないこと。余計な戦いに関わる必要なんてないのです」


 アディが小魔導師のもとにやってきて胸を張った。


「私たちも、カエルレウス氏族の一員なんでしょう? ここで止めたりしないから!」

師匠マギステルよ……。ああ、感謝しよう」


 考え込んだ団員たちの中で、エドガーが口を開いた。


「ならば戦力はどうする? エルネスティ、お前の力は俺たちも良くわかっている。だが巨人とは……幻晶騎士のようなものだ。たった二人で加わってどうにかなるのか?」

「カササギがあります。奇妙な形ですが、これでもイカルガの躯体を元にして作ったもの。巨人族とともに戦うのに、十分な力があります」


 その時、固まっていたディートリヒが長い吐息とともに戻ってくる。


「なるほどね。しかし君という奴は我がままなのか律儀なのか、たまにわからなくなるよ。どうしたものかな……」


 ざわざわと、話し合う声がそこかしこで湧きあがった。銀鳳騎士団の行く先は、各人の意思へと委ねられたのである。気まぐれな騎士団長が寄越した問いかけに、皆がそれぞれの答えを探り始めた。

 それに対して、焦りを覚えたのがザカライアだ。


「お、お待ちくださいエルネスティ様。あなたには戦う理由がある、ならば何故お命じにならないのですか!? ここにあるのはあなたが率いる騎士団なのでしょう。あなたのお力は疑いませんが、これだけの力を無為にすることもないはずです!」


 彼からすれば、エルだけではなく銀鳳騎士団の戦闘能力の全てが欲しいのである。個人の気まぐれで軽々しく決めてもらっては困るのである。とはいえ、この不可思議な集団を説得できるだけの材料を彼がもたないのも事実だった。

 救いの手は、意外なところから差し伸べられた。ざわめきの中から、エドガーの声が問いかける。


「エルネスティ、もしも騎士団全体が戦いに加わればどうなる? そこに俺たちにとっての価値はあるか?」

「……巨人と僕たち。離れて生きていた二つの種族は、こうして出会ってしまいました。もう、見なかったことにはできないでしょう。でしたら次は、これからどのような関係を築くかです。見ての通り手を取り合うことだってできますが、相手にするにはルーベル氏族は少しばかり乱暴すぎる。何しろ、小鬼族を下僕とみなしているわけですしね。幻晶騎士があれば対抗できなくはないですが、手間ばかり大きくなるというものでしょう」


 エルは考えつつ答えた。


「巨大な、人。彼らを相手に関係を築くうえで、我々は力を示しておく必要がある。そういうことか」

「そ、そのとおりです。西の民と小鬼族われわれの未来のためにも、ここで傍観する手はないでしょう!」


 人と、巨人。今はまだ森が両者を隔てている。とはいえ互いの存在をはっきりと認識した以上、ずっとこのままということはないだろう。何よりも人には飛空船レビテートシップという強力な機械がある。

 さらに、これは人間にとってまったく関係ない戦いかというと、そうでもない。小鬼族が、まさに渦中にいるからだ。ザカライアは勢いづくが、団員たちから返ってきた反応は期待に添うものではなかった。


「まぁ仕方ない。団長が好き勝手するのなんて、いまさらだしな」

「どうする? ただ待ってるのも暇だろ」

「俺ぁ巨人の戦闘能力に興味があるな。あいつら、魔獣より強いのかね?」

「第二中隊、戦闘狂すぎるだろ」

「大丈夫だよ小魔導師パールちゃん! 俺は君の力になるから!」

「お前……」

「はいちょっとー離れてー。小魔導師パールちゃんは私の弟子なので、変な目で見るのは許しませんから」

「ひでぇ、横暴だ!?」


 興味の方向も、動きもてんでバラバラである。本当にこれが騎士団としてひとつの集団にまとまるのか。信じがたい気持ちとともに、彼は暗澹たる気分に陥っていた。

 小鬼族の未来を背負う、彼の切なる願いも虚しく。銀鳳騎士団はまさしく好き勝手に動き出し始めていた。


「ふむ。じゃあこうしよう。私は団長に勝手についてゆく。来たい者は来ればいい。残りは退路を確保しておいてくれ。できれば拠点があるとなおよいね」

「あ、拠点にするなら良い場所がありますよ」

「ではそこをいただくとするか」

「了解! 拠点は俺たちで制圧しておきます!」


 第一、第二中隊がまず分かれる。そうすると、次は鍛冶師隊だ。


「俺ぁ坊主の機体整備するからよ、ついて行くぜ」

「親方、整備班テキトーに分けときますよ」

「おう、任せる」


 斯くして銀鳳騎士団の方針は決まる。概ね二つの組があり、エルについてくる者と拠点を作る者に分かれていた。もちろん、飛空船もそれぞれに割り振られる。

 方針が決まってしまえば、後は気楽なものだ。団員たちは口々に雑談を始めていた。


「食料ってこっちで賄えるかな」

「結構長居することになりそうだしね」

「巨人に頼めないの?」

「つーか魔獣食うの?」

「普通に美味しかったですよ」

「団長が変に逞しくなってる……」


 喧騒の中でただ一人、ザカライアは銀鳳騎士団という存在に呆れていた。

 いったいこれは何なのか。騎士団、というものは統率された集団ではないのか。なぜそれぞれが好き勝手に振る舞いだしているのか――。

 小鬼族における騎士、あるいは騎操士ナイトランナーというものは特権階級であると同時に、幻獣騎士ミスティックナイトを操る義務を負う。小王オベロンの統治のもと、勝手など許されはしない。そもそも幻獣騎士には限りがあり、椅子を狙う者も少なくはなかった。隙を見せることなどあってはならないことである。

 彼は眩暈を抑えながら、ふらふらとエルのもとに向かった。


「エルネスティ様、あなたは騎士団の長なのでしょう! なぜこのように勝手を許すのですか!?」


 エルが長であるというのは、間違いないように思える。騎士団の全員が彼の言葉を聞いて反応しているからだ。だが統率されているとは、お世辞にも言い難い。


「もちろん、必要があれば指揮します。ですが、今はそうではありませんし」

「そのように暢気な!?」


 彼は唇を噛んだ。戦いの行方すら左右しかねないほどの力を持ちながら、振るう者たちがまったく勝手で始末に負えない。このままでは、西の民との協力すら難しいと思われた。

 彼はそっと、場を後にする。背後では、騎士団のあげる喧騒が尽きることなく続いていた。



 それから中隊長たちが話し合い、具体的な行動指針が立案されていった。そんな中、さっさと鍛冶師隊の振り分けを終えた親方が、エルのところへと重大な相談をもってきた。


「おう、坊主。おめぇはこのままカササギを使うのか?」

「そのつもりです……あ、もしかして」

「そのもしかしてだ。ぶっ壊れたのは見てたからよ、イカルガの予備部品、丸々一機分持ってきてんだ。組み上げに時間はかかるだろうが、直せるぜ」


 珍しく、エルはぽかんとした表情を見せて固まる。親方は、これを見られただけでも持ってきた価値があったな、などとどうでもいい感想を抱いていた。

 ややあって再起動を果たしたエルは、ぎこちない動きで首を巡らせる。視線の先に鎮座する、上半身だけの幻晶騎士を見上げて動きを止める。


「どうするんだ? まさか、こんなことになってるたぁ思ってもみなかったからよ。まさかイカルガを放っておくつもりか?」

「う、うう。ああ……それは」


 エルは幽鬼のごとくふらふらと、カササギとイカルガ(の部品)の間を彷徨った。

 イカルガは彼が望み、全身全霊を賭して生み出した相棒だ。しかしカササギとて苦楽を共にした相棒に違いはなく、さらに極めて特殊な機能を有している。

 恐るべき問題だった。天秤の両端には、等しく貴重なものが積み上げられてゆく。


「イカルガを……動かすためには皇之心臓ベヘモス・ハートが必要です。ですがカササギもまた、これでないと動けません。どちらも、機能の維持に多量の魔力を必要とするのです……」


 そう、しかも動かせるのは片方だけだ。究極の二択であった。深く考え込んだエルがついに小さく震えはじめたのを見かねて、親方が声をかけた。


「じゃあよ、そのカササギの機能をイカルガに移しちまえばいいんじゃねぇか。坊主、任せとけよ。俺たちゃ銀鳳騎士団の鍛冶師隊様だぜ? きっちりと仕上げてやるからよ」


 エルが目を見開き、見たこともないくらいに追いつめられた形相で振り返る。親方は思わず一歩後退った。


「…………このまま、カササギを使います。もちろん、親方の実力は誰よりも知っています。しかし今は、小魔導師を連れてゆかねばならないのです。それだけの大改修を待つ余裕がありません」


 身を斬られるような思いで、エルは決断を下した。

 カササギのもつ最大の特徴、開放型源素浮揚器エーテルリングジェネレータは極めて特殊な装置である。体当たりで作ったものであるため出力だけで無理やり動かしている状態な上に、原理や構造はエルしか把握していない。さしもの親方にとっても難物であることだろう。

 さらにいえば、イカルガの筐体は圧倒的な戦闘能力を実現するために極限まで突き詰められており、これほどの機能を受け入れる余裕が残されていない。

 両者の全ての機能を欲するのならば、完全に新たな筐体が必要になるだろう。

 理解を示しながらも、親方は嘆息を抑えられないでいた。


「せっかく、イカルガ持ってきたっていうのによ。それにこいつは騎士団の顔だ。こればかりはカササギにゃあ荷が重かろうよ」

「フレメヴィーラに帰るまでの間だけです。戻ればもっと落ち着いて考えることも……」

「よし! じゃあ決めた!」


 そこに、アディが割って入る。彼女はビシッとイカルガの部品を指さすと、エルへと振り向いた。


「エル君が使わないなら、イカルガは私が使ってもいい!?」

「アディが?」


 意外な提案を受けて、エルが呆気にとられる。


「思い出して、エル君。カササギを作るのにイカルガとシーちゃんの材料を使ったけれど、心臓部は丸々一個残ってるでしょ?」

「そう、ですね。あの場にあった材料でもう一機分の躯体を用意するのは、さすがに無理でしたから」


 カササギを作るために、無事な部品をかき集めて使った。それでも下半身は諦めねばならなかったのである。

 そのため、シルフィアーネに積まれていた心臓部はまだ村に残されたままだ。


「だから、シーちゃんの心臓部を使ってイカルガを動かすの! どう?」


 アディの提案を聞いた親方は、しばし顎を撫でて考え込んでいたが、やがて眉間を険しくした。


「シルフィアーネに乗っけてあった炉は、普及品だろう? ちいとばかし厳しいな。皇之心臓がねぇと、イカルガの馬鹿みてぇな消費を支えきれねぇ」

「えー、そっか。いい案だと思ったんだけどなー」


 アディは不満げに指を彷徨わせる。親方は、それからしばらく何かを計算していたが、やがて唸り声と共に頷いた。


「だが、無理でもねぇな。工夫次第で誤魔化す程度にゃできるだろう。坊主が使うみてぇにバンバンぶっ飛ばすのは無理だ。色々と機能に制限はつくぜ」

「じゃあ! できるんだ」

「なるほど。このまま眠らせておくのも勿体ないですし、ここはアディにお願いしますね」


 エルが頷く。アディは小躍りしながら彼に飛びついた。


「任せて! いずれエル君に返すまで、私がイカルガをしっかりと守っておくから! うんうんこれも妻の役目よねうひひひひひひ」

「えーと。うん、まぁ、はい。イカルガのことは頼みますね」


 うっとりと頬ずりするアディを遠巻きに眺め、親方はこっそりと横のディートリヒをつつく。


「おい。妻だのなんだの、嬢ちゃんいったいどうしちまったんだ」

「エルネスティがあまりにアレだから、ついに妄想が変なところに入ってしまったのかもしれない」

「手遅れか……残念だ」


 二人して肩をすくめる。周りの勝手な解釈などどこ吹く風、アディは心行くまでエルを抱きしめたのだった。



 イズモの上部甲板を、風が吹き抜けてゆく。訪れる者も少ない場所に、ザカライアの姿はあった。

 彼は周囲を見回し、誰もいないことを確かめると懐から筒を取り出した。栓を捻って開き、しばらく待っていると中から小さな虫が這い出てくる。カチカチと顎を鳴らしているそれは、甲虫こうちゅうの一種のように見えた。

 彼が独特の調子で舌を打ち鳴らすと、虫は筒の端で大人しく止まった。胴体に手早く文を括り付けると、彼は再び舌を鳴らす。虫は羽を広げ、ぼんやりとした虹色の燐光を漂わせながら空へと舞いあがった。


「頼んだぞ。西の民は、私の手には負えない。小王のお力が必要だ……」


 小さな虫はすぐに空に紛れてゆき、見つけるのが難しくなった。

 彼は筒を懐に戻すと振り返り。そこに人影があることに気付いて、ぎょっとして動きを止めた。


「なるほど。これがあなたたちの言う、連絡手段なのですね」


 エルネスティである。ザカライアは開きかけた口を一度閉じ、ゆっくりと開き直した。


「……ご覧になっていたのですか。ですが、止めないのですね」

「はい。あなたは連絡役としてついてくると、了承しましたから。連絡をつけるのは当然でしょう。もしも他にも知りたいことがあるならおっしゃってください。できる範囲でご案内しますから」


 ふんわりとした微笑みを後に残して、エルは戻ってゆく。その背中を見送りながら、ザカライアは知らずに噴き出していた汗をぬぐった。


「いったい、何なのだアレは。何なのだこの騎士団は。西の民は、どいつもこいつも、何を考えている……!?」


 彼は、確実に解けることのない問題に頭を悩まされることになる。


 かくして巨人族と小鬼族の運命に、銀鳳騎士団が好き勝手に絡み始めた。当事者たちのまったく与り知らないところで、事態は混迷の度合いを深めてゆくのである。

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