戦いの地に
けろよん
第1話
その荒野では古くから続く戦いがあった。
「キノコが最高だ! キノコが最高に決まっている!」
「何を言うか! タケノコこそ最高! タケノコこそ最高に決まっておろうが!」
そう、キノコタケノコ戦争である。争いはいつ果てるともなく続いた。そこに一人の男が訪れた。
「争いはそこまでだ!」
「何い! ならばお前にもどちらが最高か決めてもらおうか!」
「決着がつくまで我らの争いは止まらんぞ!」
「フッ」
彼らの見幕に男は全く動じなかった。そして両手を静かに差し出した。その姿を見て周りの人達にどよめきが走った。
男が片手にキノコ、もう片方の手にタケノコを持っていたからだ。
「馬鹿な! 二刀流だと!?」
「なんという冒とく! だが、本当に美味しいのは一つに決まっている」
男がどちらを選ぶのか。みんなの注目が集まる。男の手が動いた。全く同じタイミングで。キノコとタケノコが。
「パクッ、もぐもぐ」
口に入った。
「どっちが最高だ。どっちが最高なのだ」
「タイミングは全く同時に見えたぞ。何と鮮やかな二刀流なのだ」
男の答えをみんなが待った。走る緊張。その間は一秒か、十秒か。やがて男の出した結論は。
「どっちも旨い!」
その笑顔にみんなの緊張が解けていった。争いの空気も止んで場も和んでいった。
「そうか、俺達はどっちも最高だったんだな」
「争いなど無益だったのだ。キノコもタケノコも最高だ!」
争っていた人達は固く握手を交わして戦争は終結した。導いた男は静かに笑みをこぼして、
「コアラのマーチ食べよっと」
次のお菓子を食すのだった。
戦いの地に けろよん @keroyon
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