シーン(2-4)

【タビサの本音】

浮かない顔をしているタビサにレイチェルがなにかあったのかとたずねる。

すると、タビサは本音を話し出す。


◯レストラン『キャロル』(夜・くもり)


BGM レストランのBGMっぽい曲(ジャズ)


レイチェル「いつもの店だよ」

タビサ「いつもの店ね。この間もビルといっしょに来た」

レイチェル「聞いちゃヤバい?」

タビサ「いや、別に……」

タビサ「ただ、ビルが店に入ってきたとたんに仕事の電話で呼び出されて」

タビサ「その後、私一人で二人分のディナーを食べた」

レイチェル「コースだったらキツイね」

タビサ「コースなんかあるわけないでしょ、こんな店に」


店員(ロボット)がタビサを見る


レイチェル「……やっぱ、気分悪い? 店変える?」

タビサ「いいよ、別に」

レイチェル「何か、あった?」

タビサ「ビルは仕事ばかり。この時期は仕事が恋人みたいなもんでしょ」

タビサ「デートをドタキャンして寄越したメールは「すまない」の4文字だけ」

タビサ「忙しいのはわかってるんだけどさ」

タビサ「そのメールに何も返信できない」

タビサ「そんなに忙しいなら仕事だけしてればいい」

タビサ「デートなんか来なくていい」

タビサ「私と付き合っていなくていい」

タビサ「そんなことばっか考えちゃって、何も返せない」

タビサ「いっしょに暮らしてても、何も話さないし、あっちもやっぱり忙しいしね」

タビサ「でも、それでやっぱりビルは仕事が恋人なんだなって考えちゃう」


レイチェル「そんなことで悩むの!?」

タビサ「しーっ……声が大きいよ」


レイチェル「ごめん。でもそんなことくらいで悩まれたらあたしら何もできないっていうか」

レイチェル「あたしらの仕事はこれからの時期忙しくなるの知ってるでしょ」

タビサ「そりゃあ……」

レイチェル「一日だけしか表舞台に立てなくってもね、その裏じゃ部外者が考えつかないくらい色々動いてるの」

タビサ「……知ってる」

レイチェル「まあ、そうだよね」


タビサ「でも、ロボットだって同じ仕事できるじゃん」

タビサ「配達の仕事って言ったってロボットがやろうと思えばやってくれるわけでしょ? 郵便配達だってデリバリーだってロボットがやってる。それなのに、ロボットにやらせないで人力でやってるのってすごくダサい」

タビサ「もう、疲れたよ。別れたい」

タビサ「ビルのこと、好きなんだ。呆れるくらい好きなんだ」

タビサ「だから彼のかせになりたくないんだ」

タビサ「……だから別れたいんだ」


レイチェル「もうすぐ、クリスマスだよ」

タビサ「……クリスマスだけど、なに?」

レイチェル「お互い忙しくなるね」

タビサ「まあ、ね」

レイチェル「ね、おもちゃ屋さん」

レイチェル「こどもたちの笑顔を見るためならさ、あたしらサンタクロースはなんだってやるよ」

レイチェル「みんな誰しもこどもだったわけでしょ」

タビサ「そうだね、うん」

レイチェル「……つまりはさ、昔こどもだった大好きな人の笑顔も見たいって思うサンタクロースはいっぱいいるってこと」

レイチェル「それってたぶん、ビルもいっしょ」


タビサ(レイチェルらしいな)

タビサ(でも、そうだったらいい)

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