万能飲み物、カレーは関係回復にも効果が煮込めます。
BBやっこ
第1話 彼へのカレー
出た。
「しっかり食べてね〜」
そう言うミリーは明るい声。美味しそうな香りに満ちた空間。というかソト、野外。帰ってきた実家のように料理の香りが漂っていた。
僕ら、『赤の戦士団』は森の近くにある休憩所、その場所で野営を行なっていた。ここでなら、結界が張られて魔物も稀にしか近寄ってこないので充分休める場所だ。
予定通りの行程でこの場所に野営の準備ができ、夕食からしばらく経っているため小腹が空いたメンバー向けへの夜食の頃合いだ。
携帯食で済ませることも多いけど、『野営をする時はカレー』がウチの団の定番。野菜カレーに肉を乗せたりと、それぞれ違うカレーになる。
で、リーダーの男に出されたのは山のように盛られた白米。
量はこの男なら問題ない。その頂上と裾野にカレーが広がる。
“初日のカレー”なので、野菜はゴロゴロと入っている。肉だ肉!の男なので焼いた肉も追加された。
ジュー!と最後の雄叫びの時だと言っているかのように肉に迫力があるのは、大きさのせいか。これでも、夕食の時よりは少ないんだ。
このリーダーのカレーが特別なのは、頂上の色。
「赤いじゃなくて、紅い。」
立ち昇った湯気の煽りで、目に刺激が!僕は辛いカレーの香りだけで咽せた。
ミリー特製、リーダーへのカレー。作った彼女の心を繁栄し、今は穏やかな様子で沈静化している様子。
爆破するまで時間は、どれくらいだろうね?
そう、作り手であるミリーの心はこのカレーの紅色のように怒りが溜まっている。
良いリーダーなんだけど、大体が雑な男だ。ミリーの苦労も分かる。小さなことでも積み重ねれば噴火は待ったなし、だよ?
そのふつふつした怒りを一身に受けた、カレー。
リーダーは悪いところがあれば反省する。だが…すぐ忘れる!
『素直で可愛い』
普段、ミリーはリーダーの事を甘ったるいくらいに言っているが。恋人同士とはわからないものだ。
どれくらいの怒りなのか。
じっと観察する団員の視線の先。
その怒りの辛さを受けるのは、リーダーの胃袋だ。
「かっら!」
「今日はまだマシらしい。」
飲み物には、果実水が用意されていた。
ミリーの怒りが噴火していたら、この程度ではすまないよ。
水を出して更に辛さを増すとか。ちょっとした意趣返しが含まれることもある。ここから話のネタにもなるカレーに命名戦。
「噴火はしてないよ、マグマカレー」
「紅いマグマのゴロゴロ具カレー」
「愛情いっぱい、甘いチョコ草の入った辛いカレー」
隠し味、とは。甘味は全くないようで、辛い辛いと旨そうに食べ進めている。
どんな薬草だったか、エルフの僕は回復士に視線で確かめた。
赤面しているところから、男性的な薬効だろうと見当をつける。
「山といえば、鉱山での依頼がな」
「私達じゃ鉱石の見分けが、つかないわよ」
「いや、そうじゃなくて、前にコロッケを石炭って名前で出してた店があってだな!」
恋人同士の美味しそうな話に参加する2人。
「とろっと卵が出てくるやつとかねー。」
「あれは宝石みたいに綺麗でした」
サラダにスープ、その無骨に見えるコロッケも割ればキラキラと美味く、湯気が立つ。
「僕は魚のコロッケが良かったなあ。」
「街での食事も楽しみですよね!」
依頼を終えて、街に帰るのはもう少し先。
「揚げ物は、野営で難易度が高いわよ」
料理を担当してくれるミリーの言葉に残念な気持ちもある。野営で美味しいカレーが食べられるのは嬉しいので感謝している。
「残念だな、宝石ゴロゴロのマグマカレー!」
どんだけ食べるんだこの男《リーダー》。
山が崩れて食べるのを見ながら、お喋りを楽しんだ。
今日の見張りはリーダーだから、寒くなる夜のために辛いもの出したのかな。
素直じゃないね。
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