もう二刀流は捨てた
夕日ゆうや
終戦へ
「二刀流だと……!」
俺は隠し持っていた、剣を振り上げる。
片方でアイシャの攻撃を受け、もう片方で敵の剣をはねのける。
「終わりだ」
アイシャはバックステップでかわし、攻撃をよける。
「ちっ」
俺とアイシャの間に爆発が広がる。
遠距離攻撃か――!
爆煙に飲まれ、アイシャは姿をくらます。
「おいおい。マジかよ。逃がしたのかよ」
サントが俺の肩に手を乗せる。
「そうだよ。逃がした。くそっ」
「サントやめろ。アブトの悔しさは引けを取らん」
「ち。おれたちだってガンバっているのにな」
怒りを露わにするサント。
分かっている。あそこで俺が飛び込んでいればワンチャンあったのだ。
でもそれを無碍にした。
俺はアイシャを逃してしまった。
皇帝第二王女アイシャ。
彼女を捕まえれば、この長きに渡った戦争もようやくの終戦を迎える。
それは分かっていた。でも、俺の手は届かなかった。
奴らは強い。
だからこそ、こっちのチームの協力が必要なのだ。
でも、今は分散している。これでは勝てるものも勝てない。
俺は――。
「このままじゃ、ダメだ……」
連携のとれていない暴君と、連携のとれた軍隊。どちらが強いのかはハッキリしている。
「てめーら! 自分の立場にあぐらかいているんじゃねー」
俺の親友、アケボノが大声を上げる。
「これは戦争だ。連携のとれた奴が勝つ。なら、しなきゃいけないことは分かっているだろ?」
「てめーには分からんよ。そいつの肩を持つのか?」
「一人に全部を任せたのはお前らだろ。誰も協力しなかったじゃないか!」
アケボノの本心、そして正論をぶつけられ、言葉を失うサントたち。
「おれたちは間違っていたのかもしれない。武勲を、地位を目指し戦ってきた。それこそ、仲間を蹴落としても。でも、ここにいるアブトは違うものを望んでおるようじゃ」
長老と呼ばれる人が声を上げる。
「我々は間違っていた。本当に平和を望むなら、アブトとともにあるべきだ」
「なら、俺は軍事力を捨てる。こんな戦いなど、こりごりだ」
「何を言っている! 我らのアイデンティティはこれから示させるのだぞ!?」
「俺にはそんなもの、いらない」
そう言い切り、俺はその場を離れる。
アケボノだけがついてくる、が……。
「お前もどっかいけ、俺は一人で平和を探す」
「なら、わしも一緒よ」
「本当の平和は自らの意思で切り開くのかもしないな」
戦争状態の続く
俺は平和への道しるべを探している。
誰もが平和で穏やかな日々が暮らせるように願って。
もう二刀流は捨てた。
もう二刀流は捨てた 夕日ゆうや @PT03wing
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