セレガンティア王国記
@seregantia
序章
両陛下が亡くなった。それは、国中に響くほどのことであった。
死因は伏せられているが病死だと聞いたが、その真実はどうなのかは誰も知らない。
次代はどうするのか、あの幼い王女を女王に、いやまさかそんなことは、それしか道はないだろうなんせ直系なのだから、と様々な声が飛び交う。
それでも、と彼女は玉座に付き、頭上には冠を。
ファー付きのマントを掴む腕が僅かに震える。
この国の頂点に立つということ。それは齢18には重すぎるものでもあった。
目の前に傅く家臣たちを見て、彼女は前を向く。
「私と、騎士団を二人きりにしてください」
その言葉にざわついたが、いち早くルーチェ・アサンドが部屋をあとにしたことから、それに習う貴族家臣たち。
閉まる扉を見てから、ゆったりと玉座から立ち上がった。
「私についていくと、決めてくれてありがとう。
私の力ではきっとなし得ないことも、あなた方が居ればきっと成せます。だから……」
騎士団たちの前にたち、軽く頭を下げてみせた。
「だから、私に力を貸してくださいまし」
その青い瞳には、僅かに涙をたたえていた。
両親との別れもそこそこに、直様女王となったこの幼い少女を、支えんべくこの役職に付いたのだから。
そう、彼女の手を離すか、握り続けるかは、君たち次第なのだが。
噂は風のように流れる。
国中に響き渡ったそれは、両陛下が御したという事実。
何が理由かは関係ない。ただ、王族たちに隙きができた、その事実が彼を動かす。
廃屋となった屋敷を拠点としている男は立ち上がった。
真っ白な髪を揺らし、蒼く澄んだ瞳で前を見据えた。
「今がチャンスだ。混乱が起きているこの最中に、女王を打倒し、革命を成す!」
その言葉に、ニッコリと微笑み、神に祈るように手を合わせるミーツェ。
「えぇ、今こそですわ。この腐りきった国を正すため、正義の鉄槌を」
そう頷くミーツェに合わせて頷き、君たちを見る。
スヴェンのリーダーシップに付いてきた者たちだ。この国に住む者として、不満を抱えた者たち。
「そのために、俺に力を貸してほしい」
彼は手を差し出す。
その手を君は一度掴んだ。そう、掴み続けるかは、別としても……。
時代が大きく動き出す。
それは、王国派か、革命派かどちらに傾くか……それとも別の道を見つけるか……。
君たちが選ぶその道は……。
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