僕以外のみんなが不幸な世界

コロッセオ

可哀想な命

僕の名前は冷愛(レイア)。

科学者達のきまぐれで作られたクローンだ。

どうやら僕のオリジナル体は老衰で死ぬらしいんだ。

その為に僕が作られたんだ。

僕は何回も僕が作られる事で永遠に生きられるんだ。

記憶こそが人間の本質だと母を名乗る人に聞いたんだ。


つまり僕はとても幸せだ。


僕は不老不死で世界で最も幸せな人間。

他のみんなは幸せかな?

今回は僕の1つの人生を教えてあげる。


―放課後。

大垣市立垣上小学校。

「なぁ冷愛、サッカーしようぜ。今日はグラウンドが乾いたらしいからな。」

肌が褐色の元気そうな男の子は冷愛に言った。

「うん、いいよ。僕はフォワードでいいかな?」

僕はクローンって言っても不自由な訳じゃない。

並の人間の体質、並の人間の思考。

普通の人間。



「ほら!冷愛!決めろ!」

褐色の子供はボールを回す。

「うん!えいっ!」

冷愛は思いっきりボールを蹴る。

ボールはゴールの横を掠めて行った。

「おい冷愛…どこ蹴ってんだよ…。」

後ろから追いついた子供は冷愛に言い放つ。

「ごめんね、僕、運動音痴だからさ…。」

小学生は遊ぶ事が仕事だった。

僕がどんなに失敗しても笑ってくれる。

ここは遊びだったんだ。

―放課後、定期テスト前日。

大垣市立垣上中学校。

「定期テストマジだりー。あきちゃん、500円あげるからノートまとめといて。」

褐色の男はノートを押し付ける。

「仕方ないな、はる君は。5教科200点いけそうなの?」

髪の毛に小さなリボンをつけている小柄な少女、明菜(アキナ)は返す。

「知らねぇよ、俺はサッカー一筋だからな。」

「はる君、僕は今回も自信ないよ。前回も270点だったし。」

冷愛はノートを閉じて言う。

「カー!お前は半分取れてるから良いよな!俺は前回150点だぜ?」

遥斗(ハルト)は頭を掻きながら吠える。

「ふふ、サッカー一筋じゃないの?」

「そうだけどよぉ…。」

明菜の質問に遥斗は声を詰まらせる。

「あっもう迎えの時間だ。」

冷愛は黒板上の時計を見て言う。

「あーもうそんな時間か。冷愛、またな。」

遥斗は冷愛に薄い笑顔で言った。

「またね、レイ君。」

明菜も笑顔で見送る。


「また今度ね。」


翌日のテストは満点だった。

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