ルガーデ殲滅戦③

【アルフレート少佐視点】

 ールガーデ峡谷 地下ー


 中は洞窟のようになっていて、それなりに狭い。

 しかもところどころに崖のようなものがあり、足場も悪い。

 視界は悪いが、まったく見えないほどじゃない。


 そして最奥、敵が潜む地へと辿り着いた。

 地下に潜伏していたリントヴルムの一頭が、壁の穴から顔を出している。


 敵が俺に気づき、牙を剥く。


「やってやるよ。俺一人でだって、お前くらい倒してやる」


 敵が突撃してきたのを、咄嗟に剣で防いだが、衝撃で後ろに吹っ飛んだ。


「ぐはっ......!?」


 壁にぶつかって地面に落ちる。横を見れば崖だった。

 危ないな、あと少しずれていれば転落死だ。


 確かに俺は弱いさ。でも、だからってお前に負けると決まったわけじゃない。

 見せてやるよ、俺の少しの強さをな。


 俺は駆けた。そして壁を蹴って、天井に足を着く。

 敵個体は反応しきれていない。


「ー獲った」


 天を蹴って剣を振り下ろす。

 その一撃は大蛇を一刀両断した。


 ああ、これでやっと、一勝だ。


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【勇者視点】

 ー同時刻 ルガーデ峡谷 地下ー


「......敵を見つけた。勝負だ」


 フランク少佐が呟く。


 横は崖で、正面の壁からリントヴルムの一頭が顔を出しているのを発見する。



 二人で来たのは単純にそれ以外にできることが無いからだ。

 下手に地上に出るより、地下で戦った方が目立ちにくい。



 この空間は地下で繋がっており、音が容易に聞こえる。もし、今ここで僕がフランク少佐を攻撃すれば、大声で叫ばれる可能性が高い。


 現にアルフレート少佐が戦闘している音が聞こえてきている。万が一、叫ばれれば僕が殺したことがバレるかもしれない。それに、後から死体が見つかっても面倒だ。



 ー来た。敵が僕の方に噛みついてくる。

 それを必死に剣で受け止める演技をして、後ろに飛ばされる。もちろん真横の崖には十分気を付けて。


「ぐはっ!」


 嗚咽を漏らし、その場を動けないように見せかける。


「おい、僕が小さくて気が付かなかったのか?」


 僕を攻撃した隙を狙って、フランク少佐が氷の剣を敵に突き刺した。


「凍りつけ!」


 そのまま敵の内側を冷気が浸食していき、敵個体は冷たくなった。


「勝ったよ、フリッツ......」


 そう言って、フランク少佐は天井を見上げた。


 そのとき、


「ッ!?」


 周囲に鮮血が飛び散る。


 立ちすくむフランク少佐の喉を素早く剣で切り裂いた。

 それはまさしく風のような速さだった。


「......」


 フランク少佐は声を出せない。


 そのまま心臓を貫いて、冷たくなっていくフランク少佐を崖に突き落とした。


 ふう。これで二人目、か。

 いや、お前らは二人で少佐なんだっけ。まあ、どうでもいいか。


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 そのまま僕は地上へ出て、大穴へと向かう。


 僕が着いたときには既に全員集まっていた。どうやら他は全て成功したらしい。


「ルード、フランク少佐はどうした」


 大佐が僕に尋ねる。そうだな、怪しまれないように、適当にでっちあげるか。


「少佐は......! 少佐は、僕を庇って死にました......! まだ未熟な僕を、守るためにッ......!」


 まるで感情を押し殺しているように、僕は言った。


「これで防壁も消えたはずだ。敵本体への攻撃を......」


 大佐が言い終わる前に、大穴から無数の小さい蛇のような生物が溢れ出た。


「何だ!?」


 蛇の長さは計り知れず、その数は膨大だ。


 その大群にバルタザール大佐は風の刃を放つ。


「はあぁッ!」


 それによって数匹が刻まれたが、減っているようには見えない。


 炎や氷などの攻撃手段をすべて使って戦うが、出てくる数は増える一方だ。


「くっ!」


「くそっ! 数が多すぎる!」


 前回は僕がすべて潰して勝利した。

 さあ、僕なしでどうやって乗り切る?


 その時、地面から轟音が響いた。


 峡谷のあちこちがひび割れていく。


「なっ!? まさか、峡谷ごと崩壊させる気か!」


 何?この展開は初めて見たな。

 前回は僕が一瞬のうちに倒したから見せていなかったのか。

 まあいい、このまま崩れてくれて構わない。僕はこの程度で死なない。



 ーやっちまえよ、全てぶっ潰してしまえ......!







 Do everything collapses?

 If that happens,the end of all............

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