残業1 インスタント麺②

3人がいつも集合するのは

2階の談話室。


3口IHがあるキッチンとローテーブル、食卓

そしてテレビとエアコンが完備されている。

寮の設備としてはどれもきれいで

なかなか優秀だ。


「さて、2人が帰ってくるまでに

ちゃちゃっとやっちゃいますか。」

凌子は結構、独り言を言う。


大きめの鍋に水をたっぷり入れて

沸騰させる。

その間にネギとキムチを切っていく。

3人分となると意外と嵩が増す。

まな板がどんどん手狭になっていって

意識が散漫になる。


「あ、そういえば豚肉のストックが」

散漫な割には良いことを思い出した。


切りかけの物たちをおいて

自室の冷蔵庫へ走る。

何かをやっている途中に違うことを思い出して

ばたばたするのも凌子の癖だ。


調味料を忘れたり、しゃもじを忘れたりすると

そのたびに走って戻る。

この行為が車社会で怠けきった体にとって

唯一の運動になっている。


がしゃがしゃとフライパンと肉を持って戻ってくると

和歌が続きを切ってくれていた。


「おかえり~~~」

この瞬間がたまらない。


「今日は麺なんだね」

和歌がにやついている。

「3人の欲求にぴったりでしょ」

凌子もにやつきかえす。


「え、しかも肉ストックあるの、最高じゃん。

 早く焼こ焼こ!」

「あ、待って水も沸騰してきてる、やばい。

 今麺ゆでたらのびるかな」

キッチンに立つ人数が増えるとよりいっそう騒がしい。


「いや、いけるっしょ」

 ついに3人目が帰宅だ。

「あ、奏~~~~~!

 おかえり~~~」

奏はいつもばしっと決めてくれる。


肉が焼ける音と

麺をゆがくお湯の音、

そして3人の笑い声。


見回りをしている管理人と目が合った。





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