第22話 魔人達の憂鬱
舞達が魔人の国に着く少し前のことである。
ユークレイスはブラックの指示通り、一足先に魔人の国に戻った。
すぐに城に行き、幹部を集めたのだ。
「ブラック様が大変な事に・・・」
城の広間にみんなを集めると、いつもに増して深刻な表情でユークレイスは話したのだ。
ドラゴンの封印が上手くいかず、エネルギーが放出されてしまったこと。
そしてブラックが消滅させようと結界に隔離したのだが、どうなるかわからない状況であり、自分は国に戻るように言われたことを話したのだ。
「そんなにまずい状況なの?
いつも何かあると任せると言うけど、ほんと困るわ。」
ジルコンは呆れたように話すのだが、ユークレイスは真面目に答えたのだ。
「放出されたドラゴンのエネルギーはブラック様と同じくらいと思われました。
正直、どうなるかわからない状況です。」
「そう・・・本当なのね。
アクアはどうしているの?
封印に失敗したのなら、まずい事になっているのでは?」
流石のジルコンもユークレイスの深刻な言葉を聞き、心配そうな表情になったのだ。
「舞殿の薬でドラゴンを分離し、アクアは助かったのですよ。しかし、封印することができず、外に放出された次第で。」
「舞が行っているの?
ほんと、危ないところに現れるわよね。
まあでも、お陰でアクアは助かったのでしょうけどね。」
国の事に関しては、ブラックがいない時はいつもジルコンが代わりに対応していたのだ。
魔人の中ではブラックの次に強い事が、明らかであったからだ。
まあ、ほとんどはネフライトがお膳立てしてくれているので、後は決断をするだけなので、代理と言っても大変な事は無かった。
だが、もしブラックが仮に消滅してしまうと、問題は簡単ではなかった。
ブラックの圧倒的な強さにより、魔人達は言う事を聞いていた部分もあるからだ。
ブラックが消えると押さえが効かなくなるという事で、国が不安定な状況になるかも知れないのだ。
そういう意味からも、ブラックには戻って来てもらわないと大変な事になると、幹部達は皆考えていたのだ。
「まあ、今のところはいつもと変わらないようにするしかないわね。
ブラックを助けに行った方がいいのじゃないかしら?」
ジルコンがみんなに話すと、ユークレイスが答えたのだ。
「いや、ジルコン様にまで何かあったら大変です。
国の事はネフライトに任せるとして、私とトルマで行きましょう。」
そうユークレイスが話すとトルマと一緒に人間の国に繋がる洞窟に向かったのだ。
洞窟を抜けるとすぐにスピネルからの思念が届いたのだ。
二人はその話を聞いた後、とても厄介な事になったと顔を見合わせため息をついたのだ。
「戻ろう。
今はもう、迎える準備をするしかないからね。」
トルマがそう言うと、ユークレイスはジルコンにこの状況をまた説明するのが大変だと思ったのだ。
ブラックとドラゴンの共存関係、そして表にはドラゴンの意志が現れていること。
ブラックと同じ、いやそれ以上の扱いで王として迎えるようにスピネルから言われた事で、ジルコンが怒るのでは無いかと思うと胃がシクシクして吐き気がしてきたのだ。
真面目なユークレイスは、ジルコンの機嫌を損ねる事がブラックに次いで恐ろしいといつも思っていたのだ。
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同じ様に舞達が魔人の国に行く前に、森の精霊とアクアは魔人の国の森に移動していた。
精霊が作る空間であれば、ドラゴンから隠れる事は容易であった。
それにここは先ほどまでの岩山での簡易的な空間ではなく、精霊の支配する森であるため、空間が消滅する事は無かったのだ。
「すまないな。
だが、ここに隠れて封印の石を保管するのが、確かに一番安全なのかもしれない。」
アクアは悔しそうに言ったのだ。
「今までずっと封印してきたのに、私では上手くいかなかった事が面目無いな。」
アクアが落胆していると、精霊は言ったのだ。
「そんな事は無いですよ。
貴方は一人でよくやりましたよ。
だから、皆んなが助けてくれるのです。
私も話し相手が出来て嬉しいですよ。
・・・それにしても、また舞が無茶をしなければ良いのですがね。」
そう言って素敵なテーブルと椅子を出して腰掛ける様に促し微笑んだのだ。
「ああ、本当にその通りだよ。
舞にはいつも心配させられるな。」
アクアも舞を思い出し顔を緩めたのだ。
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