第25話 君島、コラボをする……らしい

「おいおいマジかよ! 君島、本当か!?」


 学校へ行くと、珍しく君島がクラスメイトたちに囲まれているようだった。

 昨日、おじさんが動画を投稿したので、また俺のことで騒いでいるんじゃないかとも思ったが……肩透かし。

 

 しかし君島、何かやったのか。


「マ、マジだよ、マジ。大マジ。俺たちもまさかと思ったんだけどな!」


 君島は皆の中心で楽しそうに笑っている。

 だがそれと同時に、冷や汗もかいているようだった。


 俺はいつもの隣に席に位置するグループに話を聞いてみることに。


「君島、どうかしたの?」

「君島? ああ。なんか高校生同士でコラボするみたいだぞ」

「コラボか……」


 コラボとは、動画配信者同士で手を組み、動画を撮影すること。

 相手の動画に出演し、そして自分の動画に人を呼び込むことが目的だ。

 お互いに視聴者が増え、基本的に好手と考えられている、動画配信者の常套手段の一つ。


「高校生同士ってことは……人気者ばかり集まるってことだよな?」

「そういうことだろ。あいつもそれなりの繋がりがあるみたいだしな」


 確か君島の【エーテル値】はB。

 ある程度数字は高い。

 そんな連中で連絡を取り合っているなんて話を聞いたことがある。

 そしてそんな連中同士で、動画のコラボをするということだろう。


「でも、たかがコラボで騒ぎすぎじゃない? そんなに大物とコラボすることが決まったの?」

「らしいぜ。今話題のあいつとコラボするんだとよ」

「話題のあいつ?」

「ああ。『ジャスティスイグナイト』だよ」

「『ジャスティスイグナイト』!?」


 俺は席を立ち上がり、大声を出してしまう。

 だが、クラスメイトたちは君島のことで騒いでいるので俺の声に気づく様子はなかった。


 俺は唖然としながら席に着き直し、彼らに聞く。


「え? コラボって……え? いつ決まったの?」

「あいつが言うには、昨日の夜に決まったってよ。向こう側から連絡が返ってきたらしいぜ」

「へ、へー……」


 返事を返したのはおじさんだろう。

 しかしおじさん……コラボってどういう風の吹き回しだ?

 何を考えているんだ……


 俺は君島の顔を見ながら、いまだ唖然とするばかりであった。


 ◇◇◇◇◇◇◇


「はぁ!? 知らねえぞ、コラボなんて」

「え、でも今日、学校で話題になってたけど」

「話題になってたかどうか知らんが、こっちにそんな話は来てない……こともないか」

「?」


 おじさんはパソコンからメールソフトを開き、そのメールの数を見せてくる。

 さらにおじさんが作った『ジャスティスイグナイト』のSNS。

 そちらのメッセージも同時に開く。


「……凄い数だね」

「ああ。基本的にはコラボの話が多いな。後は案件もある」

「案件まであるの!? で、案件ってどんなの?」

「ん」


 おじさんは俺にメッセージを見せてくれる。

 案件とは、動画やSNSなどで商品紹介をする代わりに、企業から賃金をいただくこと。

 そして『ジャスティスイグナイト』に案件はすでに数件きているようだった。


 飲料水の案件や【ギアプログラム】の案件……

 色々きているようだが、これ、おじさんはどうするつもりなんだろ。


「おじさん、案件は受けるつもり?」

「受けてもいいけどな……でも、動画作るのも面倒くせえ」

「だよね」

「【ギアプログラマ】は俺の作るやつの方が優れてるし、案件と言えどこんなのタクのプログラムに組み込みたくねえよ」

「俺もおじさんのプログラム以外使いたくないよ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか、タク。俺らは二人で『ジャスティスイグナイト』! これからもよろしく頼むぜ、相棒! 一人で有名にならないでね」

「なんでいきなり不安になってるの!? 心配しなくても、おじさんを裏切ったりしないよ」


 おじさんは自分が弱いことに、いまだに後ろめたさのようなものを感じているようだ。

 でも、俺が強いのはおじさんのおかげ。

 おじさんが【エーテルマスター】を譲ってくれたからなんだ。

 だから彼を裏切るつもりなんてない。

 って、そもそも何があっても人を裏切らないって決めてるんだけどね。


「あ……そのメッセージ見せてくれる?」

「ん? これか?」


 『ジャスティスイグナイト』のSNSに沢山来ているメッセージ。

 その中の一つに、『ワンダーナイツ』から送られきたメッセージがあった。

 『ワンダーナイツ』……それは君島のことだ。

 あいつ、『ジャスティスイグナイト』にコラボの打診をしてたんだな。


「これがどうした?」

「同級生だよ。ほら、さっきのコラボの話の」

「ああ……よし。却下、と」

「判断早すぎじゃない?」

「こんなのとコラボしたところで、俺らにメリットはねえだろ? ってか俺らは、あの『フォーフォレスト』とコラボができる可能性だってあるんだぞ? 今更小物相手にコラボなんてできるかよ」

「おじさんは辛辣だな……」

「現実的なだけだ」


 この間まで『フォーフォレスト』のことも知らなかったくせに。

 なんて思うが、俺は『ワンダーナイツ』のメッセージを見て、おじさんに言う。


「彼のコラボ、受けてやってよ」

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