第22話 急成長

 純とは連絡先を交換し、俺は病院を後にした。

 外はすでに暗く、チラホラと星の光が空に見える。


 現在俺は、おじさんの家に向かっていた。

 昨日のことや、能力の関係で話があるからだ。


 歩きながら結希に帰りが遅くなることを連絡しておく。

 家事は二人で分担しており、今日の晩御飯の担当は結希。

 あいつは俺が帰るまで食べないで待っててくれるからな……遅くなることを連絡しておかないと、無駄に待たせてしまう。

 帰ってから一緒に食べるとメッセージを送り、そしておじさんの家の前に到着する。


「こんばんは、拓斗くん」

「こんばんは、五十鈴ちゃん」

「ヒロちゃーん。拓斗くんだよ」

「ヒロちゃんって呼ぶんじゃねえよ、コノヤロー」


 俺を出迎えてくれる笑顔の五十鈴ちゃん。

 おじさんは五十鈴ちゃんに呼ばれ、玄関までやって来る。


「入れよ」

「うん」

「あ、拓斗くん。ご飯食べてく?」

「いや。結希がご飯を作って待ってるって言ってるから、やめておくよ」

「結ちゃんとも会いたいなー。今度一緒にご飯食べようって言っておいて」

「分かったよ」

「俺、その時は辞退させてもらいます」


 おじさんは顔色を少し悪くして、そう言った。


「おじさん、結希が苦手だからね」

「苦手と言うか、嫌われているというか……あいつは俺をゴミでも見るかのような目で見てくるんだよ……まるで兵士を始末するム〇カのように! そんな目をしてんだよ!」

「いや、そこまで酷くないと思うよ」

「そこまで酷くないってことは、それなりに酷いってことじゃねえか!」


 それは否定できない。

 何故か結希は、おじさんのことを毛嫌いしてるからな……

 多分、うるさいのが嫌なんだろうな。


「五十鈴ちゃんには会いたいはずだから、今度俺の家で食べよっか」

「うん」

「行くつもりはさらさらないが、さらっとのけ者にされるのは堪えるな……」

「面倒だな! 顔を合わせているうちに仲良くなれるかもよ。だからそれまで頑張ってみたら?」

「それまで頑張れるほど、メンタルが強いわけじゃない……はい。出来る限り顔を合わせるのは止めておきます」

「もう。少ない親戚なんだから、仲良くしてよ」

「うっせー。俺にはタクがいるからいいんだよ。こいつがいりゃ、それなりに楽しいからな」

「俺も楽しいよ、おじさん」

「ありがとよ」


 おじさんの部屋まで移動し、俺はおじさんに携帯を手渡す。

 五十鈴ちゃんは晩御飯の用意をしているらしく……いや、本当にできた子だ。


 おじさんは携帯とパソコンを繋ぎ、そして何故か体を硬直させている。


「どうしたの?」

「どうしたのって……こっちが聞きてえよ」

「?」


 俺は画面に映し出された物を視認する。


 ------------


 ジャスティスイグナイト2号

 エーテル 411 力 266 

 防御 257 体力 258 

 素早さ 271 魔力 255

 アーム 

 パワー 5 ガード 5

 スピード 10 マジック 4


 アーツ

 イグナイトスパイク 2


 スキル 

 エーテルマスター スピードⅠ


 ------------


「え……ちょっと……能力上がり過ぎじゃない!?」

「あれか……ドラゴンを倒したからか」

「なるほど……あれが原因か」


 突如現れたドラゴン。

 あれを単独で倒したことにより、急激なパワーアップをされたのか。


「でもおじさん、あのドラゴンはなんだったんだろうね?」

「その話だがな……どれだけ調べても情報が出てこないんだよ」


 おじさんは俺のステータス画面から切り替え、数々の情報を見せてくれる。

 だが彼の言う通り、どこにもドラゴンのことは書かれていないようだ。


「あんな化け物が突然出現することもこれまで無かったし、あんな化け物を見た奴もいまだにいない」

「俺たちが最初の犠牲者だったって可能性は?」

「どうだろうな……だが、ダンジョンが出現してから結構時間が経過してるんだ。いきなりあんなこと起こるとは考えにくいけどな」


 おじさんの言う通りだ。

 ダンジョンの存在はもうずいぶん前からになる。

 それなのに突如俺たちにそんなイレギュラーなことが起こるとは、ちょっと無理があるよな。


「これまで無かったということは……意図的に誰かが俺たちを襲った?」

「誰が襲うんだよ。誰かに恨みでも買ったか?」

「いや、そんな記憶はないけど」

「俺は……嫌われ者だから否定はできないな」

「おじさんを襲うためにドラゴンを出現させた!? そんなことある?」

「……あり得ないな。俺を殺すなら、適当なモンスターで十分だ」


 答えは出ない。

 俺たちは何もしていないのだから。

 襲われるような身に覚えが一切ない。


「だけど、何かが動いているって考えていた方がいいかもな」

「……知らず知らずのうちに、誰かから命を狙われているってことか……でも、そんなことってあるかな?」

「あるって考えた方が燃えるだろ!? 見えない悪の手が襲うなんて、ヒーローっぽくて面白いじゃねえか!」

「ああ……なるほどね」


 おじさんの頭はどこまでもヒーローでいっぱい。

 俺も人のことは言えないけど、おじさんほどではない。


「とにかく、注意だけはしておこう」

「おう。そうだな」

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