お前が好きなのって、あいつじゃないの!?
第212話 平和な日常
本日より5章に入ります
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学校の文化祭が終わって2週間が経過し中間テストも終わった頃、俺達は束の間の安息を得ていた。
現在は4限目の授業が終わった昼休み。俺はいつものように家で握ってきたおにぎりを鞄から取り出す。
「今日も平和でいい日だな」
あの文化祭以降、特に問題もなく暇を持て余していた。
1学期のような大きな騒ぎもなく、平和な日常を過ごせている。
「しゅん‥‥‥」
「俊介君!」
「結衣、どうしたんだ? そんな大きい声なんて出して?」
「一緒にお昼ご飯を食べよう」
「いいよ。俺の席の前に椅子が置いてあるから、その椅子を使って」
「うん、わかった!」
文化祭以降、こうして結衣と一緒に昼ご飯を食べる機会が多くなった。
特に約束をしたわけではないが、最近一緒に昼食を共にしている。
「実は俊介君に相談があるんだけど‥‥‥」
「どうしたの?」
「今日もお弁当作り過ぎちゃったから、少し食べてもらえないかな?」
「もちろんいいよ。むしろ毎回お弁当をわけてくれてありがとな」
そして彼女は俺と弁当を食べる度に、毎回自分が作ってきてくれたお弁当をわけてくれる。
おかずがない俺としては嬉しいけど、たまに自分の分も少なくなって大丈夫か心配していた。
「俊介!!」
「うわっ!? 何だよ、葉月。お前もいたのか」
「『いたのか』じゃないよ!? 僕も一緒にお昼を食べるからね」
「あぁ。別に構わないぞ」
こうして葉月が俺の所に来るのもいつもの事だ。ただ最近は徐々に影が薄くなっている。
「(なんだか最近葉月よりも結衣の方が主張が強い気がするんだよな)」
結衣と一緒にいることが多いせいか、最近葉月が側にいる印象があまりない。
だから最近イライラすることもないのだろう。なんだかそんな気がした。
「結衣ちゃんのお弁当も美味しそうだね」
「葉月君も少しだけ食べる?」
「いいの!?」
「うん。葉月君の分は取り分けるから、ちょっと待ってて」
そう言って結衣は葉月の為に自分の弁当をわけ始める。
この光景も最近見慣れた光景である。
「葉月、そんなに結衣の弁当をもらって大丈夫なのかよ? まさか残すなんて事はしないよな?」
「大丈夫だよ。今日は千夏のお弁当だし、これぐらいの量なら全然大丈夫」
「それならウチも明日からお弁当の量を増量をしようかしら?」
「ちっ、千夏!?」
葉月の後ろから現れたのは久遠である。
いつも通り目を釣りあげて、ちょっと怒りながら葉月の事を見ていた。
「ウチのお弁当じゃ飽き足らず結衣のお弁当までもらっているなんて。そんないっぱい食べてもしウチの弁当を残したら許さないわよ!!」
「大丈夫だよ。ちゃんと全部食べるから」
「本当でしょうね?」
「うん! 千夏のお弁当は美味しいから大丈夫だよ」
葉月はこういう奴なんだ。この一言で久遠は何も言えなくなる。
むしろ自分の美味しい弁当と言ってくれて喜んでいる節さえある。
「もう、しょうがないわね。そう言われたら怒れないじゃない」
怒れないと言いながら、俺の予想通り久遠はとても上機嫌だ。
頬を染めて葉月の事を見ている。
「ちょっと久遠さん、こんな所で調子にのらないでくれないかしら?」
「そうですよ! 久遠先輩。そこはもうちょっと自重すべきです!」
結衣の横から現れたのは紺野先輩と星乃である。
葉月と久遠がいちゃついているのが許せないのか、
「何よ!! あんた達も美味しいお弁当って言われてないから、ウチに嫉妬しているの!!」
「別に私も美味しいお弁当って言われたことあるし‥‥‥」
「あたしも! 葉月先輩に同じことを言われました!」
「えっ!? それってどういうこと?」
「つまり葉月君はみんなに同じことを言っているのよ」
その事実を聞いた久遠は違う意味で顔が赤くなっている。
一方葉月はというと、のんきにもらった弁当を食べようとしていた。
「ちょっと葉月!! 私以外の人の弁当にも美味しいって言ってたの!!」
「うん。だってみんなのお弁当は美味しいんだもん」
「みんなのが弁当が美味しいって言ってるけど、誰のが1番美味しいのよ!!」
そう言って久遠が葉月に詰める。
葉月に詰めたのと同時に、葉月は誰かの助けを求めていた。
「その質問、あたしも気になります」
「麻衣ちゃん!?」
「ちょうどいいわね。私も誰絵が1番美味しいお弁当を作っていたか聞きたいわ」
「紺野先輩まで!?」
「ちょうど3人の意見も一致したことだし、折角だから葉月に聞いて見ましょう」
3者からの圧に負けてしまい、今の葉月はたじたじである。
これも最近よく見る光景で、葉月がこの3人によく詰められていた。
「しゅっ、俊介!?」
「俺に助けを求めるな。自分で蒔いた種なんだから、自分で解決しろ」
俺に何かを言われた所で、3人の弁当を食べたことはないし感想をいう事が出来ない。
だからはっきりと3人のうち誰が美味しい弁当か決めた方がいい。結衣の弁当しか食べたことない俺には判断できない。
「俊介君。お弁当食べよう」
「あぁ。そうだな」
結衣もこの光景になれたようで、いつも通り俺と結衣の間に自分の弁当箱を置く。
この対立構造になった当初結衣も参戦しないか聞いたけど、しないと言っていたので俺もそっとしておいた。
「それじゃあ食べようか。早く食べないと5時限目が始まる」
「うん」
それから俺と結衣は2人で昼食を食べ始める。
俺達が昼食を食べている中葉月は3人に睨まれて、ずっとあたふたしていた。
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