文化祭 孤独な戦い
第161話 女大統領 委員長
夏休みが終わり本日は始業式。2学期が始まるこの日、体育館で校長先生の長くて退屈な話を聞いた俺は教室にいた。
「それでは多数決を取るから、全員この中でやりたい出し物に手をあげて下さい」
いつもは早く終わるはずのショートホームルームが、今日は珍しく長引いている。
教壇の前には先生の次に偉いと言われているクラスの長である委員長が立っており、挙手した人数を数えていた。
「それでは多数決の結果、私達のクラスは演劇をやる事に決まりました。今日からみんなで力を合わせて、文化祭まで頑張りましょう」
俺達のクラスのショートホームルームが長引いていたのはこれが原因だ。
それは文化祭でクラスの出し物を決める為、こうしてクラス全員が集まり話し合っていた。
「それでもこの時間でまとまったのは、委員長の手腕だな」
普通だったらグダグダと話し合いが続いて時間だけが過ぎていきそうだが、リーダーがしっかりトップダウン方式で進めてくれるおかげで、話し合いがスムーズにに進行している。
黒板に書かれている出し物も殆どが夏休み前に委員長が考えてきたものらしい。
出し物を決める際あまりにも提案が少なかった時の為に作った物らしいけど、その準備が功を奏した。
「伊達に女大統領と言われるだけはあるな」
委員長のカリスマ的リーダーシップを見て、誰かが彼女の事をそのように表現した。
彼女もまんざらではないようで、そのあだ名は徐々に周りに浸透していき今に至る。
「委員長!!」
「何?」
「文化祭で飲食店は出店できないの? 劇よりも飲食店をやった方が絶対楽しいでしょ」
「飲食店をするには火器類を使わないといけないから、私達には出来ないのよ」
「どういう事? 火器類なんて家からガスコンロとか持ってきて、教室で使えばいいじゃん」
「そういうわけにいかないの。文化祭の規則で調理関係を行う場合は家庭科室及び家庭科準備室の土地甍の場所でしか行えないの」
「それなら家庭科室を使えるように申請をすればいいだけじゃん。何も問題はないよ」
「最初は私もそう思ったわよ。だけど家庭科室を使うにもスペースに限りがあるから、基本的に部活動と最上級生に優先的に割り振られるの。夏休み前に先生に確認したけど、今年は3年生と部活動中心に家庭科室を使うから、申請しても通らない可能性がかなり高いと言われたわ」
「そうだったんだ」
「それに文化祭2日目一般公開される日の午後に家庭科室で料理部がイベントを行うから、その場所が一時的に使えなくなるの。だからもしかすると部活動でも出店出来ない所が出てくると思う」
さすが委員長だ。そんなことまで既に確認していたのか。
あらかじめ飲食店をやると声を上げる人がいるかもしれないから、あらかじめ調べていたのだろう。
回答も完璧だし、質問していた人も何も言えないようだ。
「他に反論する人はいない? いないなら次は劇の演目について決めていくわ」
ここでも劇の演目が決まらないと見るやいなや、委員長が適当な劇の演目を黒板に書いていく。
それから再び多数決を行うと、劇の演目もすぐに決まった。
「それでは劇の演目はシンデレラで決定しました」
「シンデレラか」
「次に劇の配役を決めていきます。主要な役職を黒板に書いていくから、みんな何をするか考えておいて」
そう言って委員長は黒板にシンデレラの配役を書いていった。
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