2022/02/17
これを書いている時点でまだ現地の日付は16日から変わっていないのだが、とりあえず16日中のロシアによるウクライナ侵攻はないのではないか。あらいぐまラスカルではないが「神様ありがとう」な気分である。
欧米の反発が予想以上に激しかったことが要因として挙げられるのかも知れない。とは言え「ああこれでもう大丈夫」とならないのが困ったところだ。インタファクス通信の報道では演習を終了したクリミアの部隊も追加撤収するらしいが、昨日も書いたようにクリミアからの撤収は去年も行なわれた、とロシア側は主張している。しかしウクライナ国境周辺のロシア軍は減らなかった。
それもあるのだろう、ウクライナ政府は「見たら信じる」と言っているし、NATOの事務総長からは「むしろ増えているように見える」との指摘もある。アメリカは人工衛星で貼り付いて監視しているはずであるから、やはり全体を見れば減っていないのは事実なのではないか。
この緊迫した情勢を受けて、俄然張り切っているのがトルコのエルドアン大統領だという。ウクライナとロシアの大統領に自分を加えた、3者会談を行いたい意向を示している。すでにウクライナのゼレンスキー大統領の了承は取り付けている、とエルドアン氏は述べている模様。あとはプーチン氏次第か。
まあ確かに、この現状を何とか平和裏に収拾できれば、あの地域におけるトルコの存在感は増すことになるだろう。先般のアルメニアとアゼルバイジャンの紛争にも介入したし、今回の問題でもウクライナにドローン兵器を売りつけているという話が漏れ聞こえてくる。自意識を肥大化させているエルドアン氏には、戦争前夜のこの様相が「ラッキーチャンス」に見えているのやも知れない。
自らの名声を高め、トルコの国威発揚に繋がるこの機会を逃してなるか、と。トルコは大国であり、世界を動かす実力があることを天下に示すのだ、と。まるで北朝鮮の将軍様のような発想であるな。しかし現実に3者会談が行なわれたとしても、そうそう上手くことが運ぶとは考えにくい。
ウクライナはともかく、ロシアにはトルコに貸しを作るメリットなど何もないのだ。それどころかロシアとしては、様々な紛争地で顔を突き合わせるトルコを軽く捻っておきたい、という意識があるかも知れない。トルコを平和の立役者として持ち上げるなど、選択肢には入っていないのではないか。面目を潰すために3者会談に参加する可能性ならあるかも知れないが。
トルコはいまエルドアン大統領による経済政策の大失敗で、猛烈なインフレが発生している。庶民はその日に食うパンにも困る有様だ。当然、大統領支持率も低下しているだろう。この状況が加速すれば、いずれ政権が崩壊する可能性だってある。そんな国内事情を背景として出てきたのが、今回のこの動きである。エルドアン氏を呑気な平和主義者だなどと考えてはいけない。
一方、この緊迫した情勢が簡単に16日限りで解消するとは誰も思っていないのだろう、G7は近くオンラインで首脳会議を開催する模様。岸田首相は15日、ゼレンスキー大統領との電話会談で、ウクライナに対し1億ドル規模の円借款を用意していると述べたらしいが、G7の動き次第ではさらに追加の支援を求められることも想定しておかねばなるまい。ロシアへのさらなる経済制裁の項目もリストアップしておく必要があるはずだ。
北朝鮮の外務省は「アメリカがロシアを制圧しようとしている」とロシアを擁護する声明を出したようだが、これはさほど的外れな指摘ではあるまい。EUはともかくアメリカとイギリスは、この機に乗じてロシアを叩けるだけ叩いておきたいと考えているだろう。可能な限り国力を削ぎ落とし、軍を養う予算を捻出するのに苦労するレベルまで叩き落とせれば、これ幸いといったところか。
正直、いまアメリカもイギリスもロシアどころではない。中国を何とかしなければならない段階に来ているのだ。ここでロシアを叩き潰せれば、後顧の憂いがなくなるだけでなく、中国に対するデモンストレーションにもなる。「次はおまえだぞ」と。ただし、それに失敗すれば逆に中国を増長させることにもなろう。アメリカもイギリスも、結構ギリギリなのである。さてそんな中、日本はどう動くのだろうな。
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