B-23
―片付けも終わりリビングでくつろぐ俺たち
いつも1人で座るソファーに2人で並んで座って、また紡の好きな音楽を聴きながら、お墓参りの時に泊まる宿を2人で探したり行く道中で何をするか、とか…。
紡のほっぺたを人差し指でギュッと押すと押した部分をブクッ!と膨らませて可愛い顔を見せてくれたり…。
料理のコツや歌う時のコツや歌詞に込められた感情…お互いが得意とすることを披露し合ったり…。
終始楽しい時間が流れて行ったんだ…。
◇ ◇
気付けば日暮れ時…
窓からは、降り注ぐ夕日の光が部屋を赤オレンジ色に染め上げていた。
…そう、そろそろお別れの時間だ…
「もうこんな時間…先輩、僕…明日の準備もあるし、そろそろ帰らないと…」
「…ああ、そうだな…」
別れの時間って…なんでいつもこう切ない気持ちに襲われるんだろうか…。
楽しかったひと時が濃ければ濃い程まだ…そばにいて…と思う気持ちが募っていく…。
「先輩…?」
「うん、どうした?」
「…夏祭り、ほんとに楽しかった…///」
「…俺もだよ?」
「…ねぇ、先輩…///帰る前に…ギュッってして…?///」
恥ずかしそうにしながらも、可愛く寂しさを紛らわそうと訴える紡に、俺は優しく答えてあげるようにそのまま、紡と少しの別れの為に頭を撫でながら…ギュッと優しく、包み込んであげたんだ…。
俺も…お前との別れは寂しいよ…。
◇ ◇
―車で紡を家まで送り
「また明日、学校でな…?」
「…うんっ!また明日…!///」
言葉を残し、家に入っていく紡を最後まで見届けて、俺も自分の家に戻って行ったんだけれど…
強い寂しさを俺は感じたんだ…。
ずっとそばにあった、紡の温もりが無くなるだけで胸がギュッとされて俺は、寂しさを覚える…。
そしてその寂しさは、家に着いてからも消える事が無くて、家の中に入った瞬間、更に切なくなったんだ。
濃かった思い出が溢れ出てきて、楽しかった時間が巻き戻されていく…この気持ちを紡も感じていたのかな…?
俺は、初めて紡を自分の家へ招待して楽しい時間を送ってきたけれど、逆を返せばいつも俺が紡の家に行って楽しい時間を送らせてもらっていた。
1人にはずっと、慣れていたはずなのに
2人だけの空間が1人だけの空間になるだけでこんなに、寂しくなるなんて…。
リビングには「置いていっていいよ」と俺が言って綺麗に畳まれた紡の浴衣が置いてあり、俺はそっと手に取って浴衣を抱きしめたんだ…。
紡が、愛しくてたまらない…
一目惚れから始まった恋は、愛しさと切なさとともに…順調に2人だけのカセットテープへと録音されていったんだ…。
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