B-21

 テーブルからは、一生懸命料理を作る紡の姿が見えて、それを見る俺の表情は、ずっと緩んだまま微笑んでいた。


 ほんと…一緒になれて良かったな…と気付けば待っている間…ずっと、紡のことを見つめていたんだ…。


 ◇ ◇


「…よしっ!出来たー!!♪」


 キッチンから紡の元気な声が聞こえてきて待ちきれなかった俺は、その声に引っ張られるようにカウンターに駆け寄って行ったんだ。


 我が家のキッチンは、対面キッチンでカウンターから料理を受け取ることが出来る。


「…紡?俺もおかず運ぶよ?」


「…うん!えへへっ、お願い!」


 俺は、カウンター越しから料理を受け取りテーブルに運んで行ったのだが…


(えっ…?!!ピザ?!!!…あれ?…お好み焼きは…??)


 俺が受け取った料理は、どこをどう見てもピザにしか見えないおかずがお目見えしていて…俺は、どうなってるのか分からないまま…テーブルに運んだんだ…。


 何往復かして、全ての料理がテーブルに並び、俺と紡も椅子に腰を据えた。


「先輩の口に合うといいなぁ…///」


「ふふっ!紡のご飯が口に合わないわけないよ?」


「…っ!もうっ…先輩ったら…っ!///」


「…冷めないうちに食べようか?」


「…うんっ!」


 俺たちはそっと箸を取り「いただきます」と共に紡の朝ごはんを口に運んで行ったんだ。


 (やっぱり…ピザだよ…なっ??)


 昨日買ってきたお好み焼きは、茶色から一変、ピーマンやミニトマト、スライスされた玉ねぎが乗せられていて…その上をチーズが綺麗にコーティングされていた。


 しかも、1つずつ食べられるようにちゃんとカットされていて…ほんと、マメだし気が利く紡に俺は改めて関心しながら俺は、ピザっぽいものを1つ、器に移して口に運んでみた………!!


「…あぁっ…はぁっ…/////」


 な、なんだよ、これ…!めちゃくちゃ美味い…!!お好み焼きなはずなのに…全くお好み焼きじゃない…!!ちゃんとピザの味がしたんだ……!


 俺の反応に紡が「…うふふっ♪美味しいでしょ〜?それっ!///」とニコッとしながら言うもんで…俺は、コクコクっ!っと言葉にならず頭を縦に強く振って反応したんだ。


「このメニューね?父さんと考えたんだー♪」


 そう言って紡は、徐に持ってきたリュックからある本を取り出して俺にみせてくれた。


【父さんの料理レシピ本】


「…これね?父さんの形見なんだ…♪」


 紡…お前は、ほんとに凄いよ…前だったら、寂しくなるからと父さんの話は、あまり持ち出したくなさそうにしていたのに昨日の話の通りこうして、俺にも父さんの事や父さんとの思い出を笑顔で俺に伝えてくれてさ…。


「…へぇ…すごいな!」


「父さんと一緒に考えたメニューもここには全部書いてあって、その1つが今日の【なんちゃってピザ!】ほら、お好み焼きってさ?なんでか沢山食べると飽きてきちゃって…それを改良してみたのっ!先輩の口にも合ったようで良かったぁ!♪」


「…ほんとに美味しいっ!…なぁ?紡??」


「なぁに?」


「俺も、作れるかな…?///」


「…えっ?!///」


「今度、俺にも…料理教えてくれないか…?///」


 俺は、紡と一緒にキッチンに立って料理をしてみたい…なんなら、俺も紡の為に何か作ってあげられるようにもなりたかったのかも…?


 そんな俺の言葉に顔を赤くしながらも「…うんっ!もちろん!///」とニコッと微笑みながら返してくれたんだ。

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