B-15

 ベランダの柵に寄りかかりながら花火が打ち上がるのを待つ俺たち。


「うわぁ…!!ほんと、ここからの眺め最高っ…!」


「この眺めに惹かれてここに決めたんだよなぁ…ずっと1人だったけど、まさかこうして大好きな人と一緒に景色を眺められる日が来るなんてさ…俺は幸せ者だな…///」


 照れ隠しで自分の髪をワシャっとする俺の横には、俺の言葉にカーッと頬を紅潮させる紡。なんだよ…お互いドギマギしてるのかよ…とその時…。


 ヒュ~…ドーン!!


 綺麗な花火が夜空に咲き始めたんだ…。


「わぁっ~!!綺麗!!」


「今年もちょうどいい位置で花火上がってるな」


「ほんとっ!ここ、すごく見やすいねっ!」


 いつものように無邪気にはしゃぐ紡。


「…おおお!!…ねぇ!先輩!あれ何の柄だろう??」


「…スイカ…か?」


「はは!逆さになっちゃってる!!」


 隣でこんな風に無邪気に笑ってニコニコしちゃって、そして花火の光で照らされる紡はなんでだろう、少し色っぽく見えてしまう。


「…え!?先輩!アレ、やばい!!!」


「…ん…えっ?!」


「い、イカちゃん!!!」


「そ…そんなに有名なのか…!?」


 後で何のキャラクターなのか調べてみよう!と笑いながら話す紡に笑顔を返す俺。


 柵に寄りかかりながら俺は、そっと紡の手の上に自分の手を重ねてみたんだ。

 紡の手が咄嗟にビクッとしていた事は、気付かないフリをして…花火に集中しながら俺は指と指を絡めて…紡の手をギュッと握りしめたんだ。


 ◇ ◇


 ―花火大会も大詰めになってきて、たくさんの花火が夜空を彩る。


 俺は、ギュッと紡の手を握りしめたまま…


「紡…?」


「うん、なぁに?」


「来年も、一緒にここで花火見ような…?」


「せ、先輩…っ!///…うん、来年も一緒に…先輩の隣で花火が見たい…!///」


 空にはフィナーレを彩る、すだれ花火が神々しく輝きを放つ…。

 その輝きに俺たちのネックレスのリングが反射して光り輝いていた。


 俺はそっと…紡の顎を取り、えっ!とした顔の紡にそのまま、熱いキスを交わしたんだ…。


「…んっ///…せ、ん…っ…////」


 顎に添えていた俺の手は、そっと紡の背に回っていき残った手は頭に回して、ギュッと紡を包み込んでいく…。


 いつも以上に熱く、そして力強く…引き寄せ合う2人…。そっと唇が離れ、俺らはじっと見つめ合った。紡の目は、どことなくトロンとしていて、頬を染めながら俺を見つめていたんだ。


 そう…ここがきっと…頃合なんだ…。


「紡…?」


「…は、はぃっ…///」


「神社の続き、してみようか…?///」


「…っ!///」


 顔が真っ赤なのに、どこか少しだけ不安そうな顔をする紡。


 『…僕…ほんとに慣れてなくて…』


 この言葉が俺の脳裏を過ぎったんだ…。


 誰だって最初から、が慣れてる人なんていない…。


 正直、俺だって男とのはしたことも無くて、色々自分なりにやり方とか触れ方とか、勉強はしてみたものの…やっぱり不安でいっぱいな気持ちは否めなかった…。


 ただ、それでもと繋がりたい…その気持ちは紛れもない真実だ…。


「急がず、出来るところまで…やってみよう?絶対に…怖い思いはさせないから…ね、紡?俺を信じて?」


 優しく、包み込むように話しかける俺に


「う、うん…僕は、先輩にしてほしい…///」


 とギュッと俺にしがみついて離れない…ついに、時が来たようだ…。


「ありがとう、紡」俺はその言葉を残して、そっと紡を、お姫様抱っこして、ベッドへと向かっていったんだ…。

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