B-16

 ―今宵、初めて交わりあった俺たちは、最後までは行かなかったものの、前よりも繋がりが強くなったとお互い温かく感じあったんだ…。


 初めて見た紡のさらけ出された姿や本能的な紡の仕草や愛の表現…俺しか知らない、愛おしい紡の真の姿…。


 紡も素直な気持ちを恥ずかしそうに「…えへっ///喜んでもらえて良かった…///」と微笑みながら伝えてくるもんだから…

 また俺の心は、簡単にやられてしまう…俺は、本当に幸せもんだよ…。


 つい最近まで辛い思い出しか書き表されていなかったカセットテープにまた1つ…ふたりの愛が録音されていく…。

 このまま、平和に書き換えて行けたら…本当に幸せだと、俺は心から願うばかりだ。


「紡…?」


「…うん??」


「お風呂、一緒に入ろっか///」


「…ふぇっ!///」


「…もうお互い、全てをさらけ出したんだ…怖いものなんて、無いだろ?///」


「う、うんっ…そうだねっ…!///」


 俺は、紡のおでこに軽くキスを残してお湯を張る為にバスルームに向かっていった。


(コンビニで買ったやつは、また今度だな…)


 ◇ ◇


 お湯張りをしながら俺らは、バスルームに入り、今日の疲れを流していく。


 さっきまでの温もりも共に流れてしまうと思うと少し寂しくなったのは、そっと俺の心にだけ留めて置くことにした。


 バスルームにイスなんてなくて、2人で立ったまま身体を洗い、流していく。


「なぁ紡?後ろ向いて?」


「ん?なんでぇ?」


 俺は、シャンプーを手に取りそのまま紡の頭に塗りつけワシャワシャと泡を立てていく。身長差のおかげでとっても洗いやすい。


「…先輩、ぼ、僕!じ、自分で…あら……あれれ?…きっ…気持ちぃいいぃ!♪」


「人の身体って好きな人とかに洗ってもらえると幸せホルモンが出るんだってさ」


「へぇっ…!そうなんだ!だからこんなに気持ちいいんだね♪それとさ、先輩に洗ってもらってるから…尚更…///」


 前を向いている紡は、どんな顔をしながらこの言葉を発していたのかな…?鏡は曇っていて見えなかったけれど、大体想像は着くよな??


「ふふ、紡?ほんとに可愛いよ?ちなみに痒いところはございませんかっ?」


「えへっ…///まーったくございませんっ!」


 あははっと笑い合う俺たち。そのまま頭の泡をお湯でバシャーっと落としてあげ、紡は髪の毛をブルブルっ!と振るい、綺麗な滴を落としていく。


 その後、俺の顔を見て頭に手を伸ばそうとしてくれたんだが…


「先輩の頭…!くっそぉ、届くけど…洗いづらい!」と身長差から俺の頭を洗うことは、ちょっと難しそうだったんだ。


「ふふっ!こればかりは仕方ないさ!…その代わり…紡?俺の背中。流してくれるか?」


「…っ!!///もちろん!!///…先輩!後ろ向いて?」


 紡に言われるがまま俺は、背中を向けた。1枚しかないボディタオルにそっとボディソープを乗せ、懸命に泡を立てる紡。そして小さな柔らかい手で俺の背中を優しく泡で包み込んでくれたんだ。


「先輩のボディソープ、いい匂い〜!」


「そうか??」


「うん!僕の大好きな匂いだよ…///僕、てっきり香水つけてるんだと思ってた!」


「香水は使わないなぁ、あまり好きでもなくて。さっ、紡も後ろ向いて?」


 俺も紡が泡立ててくれたボディソープを手に取り、しっかりと背中を優しく泡で包み込んで俺と同じ匂いを染み込ませていく…。


「これで、同じ匂いだな?」と俺が囁くと背中越しからもキュンっとして肩が上がる紡が見て取れる。


 お互いしっかりと全身を洗い終え、身体を包んでいた泡を流していると『お風呂が沸きました♪』のアナウンスが流れ、ホカホカに焚き上がった湯船が俺たちを今か今かと待ちわびているように軽く波を立てていた。


「紡、入ろう?」

「うん…!!」


 2人で一緒に湯船に足を入れ、ザァーっとお湯が溢れ出ていく…。今までは1人で入っていたからこんなことはなかったのにな…。


「んーっ!!!!気持ぃぃぃぃいい!!!」


 お湯に浸かるなり、気持ちよさのあまり顔がふにゃふにゃになる紡。


「紡、お風呂好きなのか?」


「うん!大好きっ!なんだろう、こう嫌なことも辛いこともお湯に浸かるとなんだがスーッと身体なら抜けていくような感じがして!」


「そうかそうか、狭くないか?」


「うんっ…!大丈夫!うちのお風呂より広いから!」


「良かった、満足してくれたようで♪なぁ、紡…??」


「うん、なぁに?」


「…こっち、おいで?」

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