B-10
射的屋を後にした俺たちは、その他にもお好み焼き屋やたこ焼き屋、お面屋さん…色々見て回った。
紡の頭には、お面屋で買った狐のお面が斜めに掛けられていて、先輩?似合うかなっ?って上目遣いでニコッと言われて…こいつ絶対なにか狙ってんだろ?しれっと俺の心をつついてきやがる。似合うし、可愛いに決まってんの!
そして、俺らの手も変わらず恋人繋ぎで握られたまま楽しい時間が過ぎていく…。
「あっ!!!!先輩!僕、あれ食べてみたかったやつだ!」
でも正直、新発見だったのは、紡ってこんなに無邪気だったんだな…ってこと。
甘えたいっていう気持ちをきっとどこかに置いてきたのに、今になって弾けているようにも感じたんだ。素の紡、俺しか知らない紡…。
「おう、いこう!」
俺自身も…とにかく全てが楽しかった。
そんな紡に連れて行かれたのは
《きゅうりの1本漬け屋台》
氷水の中でキンキンに冷えたきゅうり漬けが並んでいて、それを皆が買い求めていて、暑いこの時期には身体を冷やす、お祭りの定番になりつつあるようだ。
「テレビで見たことがあって、どんな感じなんだろう?ってずっと思ってんだー!!!」
そんな風に無邪気に話す紡は
「おじさん、きゅうり1本下さい!!」
「あいよー!!!」
なぜか紡は、1本だけ購入する…。
「紡、1本でいいのか??」
「うんっ!十分!!!」
そのまま、パクッ!と大胆にキュウリを丸かじりする紡。
「…んーっ!!冷たい!!!わぁっ…!でも美味しいっ!!!」
嬉しそうに食べるくせに、キュウリを丸かじりと来たら、なんだか俺も想像がついていなくて…。
それでもこんなに可愛く食べる紡が可愛くないわけがなくて…そんなことを考えていると
「先輩っ…?はい!」
「…えっ?///」
ひと口食べたキュウリを俺の口元に向けて「美味しいよ?先輩も…食べてみて?///」なんて言うもんだから…そのまま差し出されたきゅうりを紡の手からパクッと1口…。
だから1本かよ…!これは紡にやられたな…
「…?!美味しいっ…!!」
「でしょでしょ〜?!!」
「ああっ!紡…?今度作ってくれ」
「…ええっ…////」
「お前なら…作れるだろ?」
ちょっとした俺からの仕返し。
お前には1本取られたよ…だったら、俺はお前の触られてむず痒いところを探って触ってやるだけだ…。
「作ったら、べ、ベランダで…///」
「ああ、うちのベランダで一緒に食べよう?」
勢いがあった紡もいつもみたいに照れ隠しするのでいっぱいになっちゃって…可愛いな、本当にさ…。
そんなことを思いながら俺たちは手を繋いだまま…お祭り会場をぐるぐると回っていったんだ。
◇ ◇
―気付けば辺りも少しずつ暗くなり
俺たちは、お祭り会場の近くにある神社でお参りをしに行くことにした。
沢山、人がいるんだろうと思って神社に足を運んだが、その思いとは裏腹に人が全く居なくて、みんな気持ちはお祭りモード全開だったのかもしれない…。
おいおい、お祭りって…本当は奉納祭だろ?みんな神社に来ないのかよっ…。
そんなことを思いながらも賽銭箱の前まで歩いてきた俺たち。
「紡?お参りしよう」
「うん!何、お願いしようかな…」
しっかりと2人で拝礼をして願掛ける。
………
チラッと片目を開けて、紡を見つめると、小さな両手を合わせて、しっかりとお願いをしていて…紡は、何をお願いしているのかな…?
そんなことを思いながら俺も、しっかりと神様にお願い事を伝えたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます