A-46 (A面完結)

 スッと凌空先輩の唇が離れた瞬間

「僕も!先輩のこと…愛してます…///」と照れながらも僕は、笑顔で先輩の気持ちに答えた。


 やっと…やっと本当の想いを先輩に伝えることが出来たんだ。


 先輩は、繋がれていた両手を放し、そのまま両手で僕を胸まで引き寄せ、ぎゅっと抱きしめてくれて、大好きな先輩の匂いに包まれた僕の耳元で「ありがとう…絶対に幸せにするから…」と先輩は囁いてくれた。


 僕も先輩の背中に両手を回し込んで…力の限り先輩をぎゅっと抱きしめながら、「はい…///これからも…よろしくお願いします…///」と声を震わしながら返したんだ。


 そのまま僕は、大好きな先輩の香りと先輩の温もりにずっと包まれていたんだ…。


 ◇ ◇


 ―帰り道


 ああ、僕…先輩の恋人になったんだ…なんだかまだ実感が湧かないよぉ…とそんなことを考えながらも自然と僕の顔は綻んでいた。


「紡、今、何考えてたんだ?」


 凌空先輩の言葉に照れながらも正直に


「先輩の恋人になったんだな…って嬉しくなってました…///」


「ふふっ♪ほんと紡は、正直でいい子だな?」なんて空いた手で僕の頭をいつものようにポンポンとしてくる、もう、それだけで幸せだっ!!


「そうだ、紡にお願いがあるんだ」


「お願いですか?」


「ああ、お前はもう俺の恋人だ、だったら…凌空って呼ぶか、敬語をやめるか…どっちかを選らんでほしくて…///」


「…え、ええっ!!??///」


 唐突な先輩のお願いにびっくりしたんだ…。でも、先輩のどちらかを選んでほしくてという言葉に僕は、真意があるようにも感じた。


(一気に進まなくてもいい…)

(焦らなくてもいい…)

(2人で、少しずつ歩んでいこう…)


 そういう風に先輩はいつも上手に、そして優しく僕を促してくれていて…僕も恋人ならその気持ちに答えてあげる必要があると、そう感じたんだ…。


「どっちがいい…?紡が決めて?」


「…先輩は、恋人になっても僕の先輩です。僕の憧れの人であり、恋人でもあります…」


「ああ…///」


「だから…僕が選ぶとしたら後者です…!///」


 そう返した僕に「選んでくれてありがとう…」とそっと笑顔で返してくれたんだ。


「じゃあ…ここからタメ口な…?」


「が、頑張ります…!///」


「もう敬語じゃないか…」


「…ああっ!つい…!///」


 ふふっ!と笑う先輩に僕も自然と笑みが溢れて、その後も2人きりの楽しい空間をいろんな話で彩りながら、僕たちは帰路に就く。




「先輩は、カセットテープって知ってる?」


「カセットテープかぁ…見たことはあるけど使ったことはないな…?」


 僕たちの時代、音楽を聴くとしたらスマホでサブスクを利用して聞いたりYouTubeやTikTokなどの動画サイトを使用して音楽を聴くけれど


 昔は、カセットテープやMDと言う物に好きな音楽を録音して楽しんでいたらしい。


 特にカセットテープは有能でA面とB面に分けて録音が出来る。


 表にするとA面で、裏にするとB面になる。


 そんなカセットテープの欠点は、中のテープが切れたら聴けなくなること。


 テープがビョーンと跳びててしまうこともある。でも、飛び出した時には真ん中にある2つの歯車を回すことで元に戻すことが出来るんだ。


 そして、カセットテープは何度でも上書きして音楽を録音することが出来る。


「へぇ…紡、詳しいな…」


「これも父さんに教えてもらって、父さんもよくカセットテープにあの好きな歌手の曲を入れてよく聴いてたんだ〜!」


「そうか、時代ってこうやって変わっていくんだな…」


 時代に沿っていろんなが変化していくけれど、変わるためにはが必要になるんだよね…?


「ねぇ、先輩?僕たちってカセットテープみたいだよね?」


「うん?なんでだ?」


「お互い…辛いことも、悲しいことも経験してきてここまで辿り着いたでしょ?」


「うん、そうだな…」


「僕がA面で、先輩がB面…」


 A面のストーリーがあって、先輩B面のストーリーがある。


 二人テープが繋がっていないとストーリーは進んでいかないし再生も録音も出来ない…。


 ストーリーは、そこで止まったまま…


 でも、お互いの苦しみや悲しみを分かち合える僕たちだからこそ、今、2つのテープが繋がって新しいストーリーを録音して再生していく事が出来る。


《僕たちの辛い、悲しい思い出》を

これからは《僕たちの楽しい思い出》へ

2人だけのカセットテープに書き換えていけるように…。

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