B面-夏祭り、理性と本能

B-1

 ―付き合い始めて2ヶ月


 季節は夏を迎えて毎日毎日、暑い日々が続いている。


 陽翔はるとは毎日、深結みゆと楽しそうにセッションに励んでいる。陽翔の男気に深結も惹かれたのか2人は付き合いを始めたんだ。


 ただ、深結の天真爛漫な姿に惹かれた陽翔も時折、深結のお転婆ぶりには手がかかる…なんて俺に零していたなぁ。


 灯里あかりにゾッコンなこう

 この2人も急激に距離を詰めていき、今では仲良く付き合いを始めている。


 当初、灯里を見ただけであんなに顔を紅潮させていた洸も、今では灯里の大事な彼氏となってお互いを支え合っているようだ。それでも洸のやつ、灯里の事で弄ると今だに直ぐ、真っ赤になるんだけどな。


 そして俺たち

 急展開まではないがつむぐとの恋は、ゆっくりながらもお互いの距離がどんどん縮まっているように俺は感じていた。


 2人で食事に行ったり、街中で一緒に買い物をしたり…紡の家にお邪魔し、美味しいご飯を振る舞ってもらったり…。


 ちょっとしたキスもまだ、どことなく緊張してしまう紡を見て可愛いな、と俺の顔が綻んでしまったり…。とにかく幸せだった。


 そういえば、紡の家に招かれることが多かった俺は、まだ俺の家に招待をした事がなかったんだ。紡は、うちに来たいといってくれるのかな…?うん、まずは今度誘ってやろう…。


 3人の恋は順調に紡がれていっていた。

 ただ、弟の存在は何も分からないまま、時だけが過ぎて行く…。


 ―7月某日


 大学でのお昼といえば、食堂で6人いつもの特等席に集まって食べる事が日常化となっていた。


 周りからは、いつの間にか「あいつら6人ほんとに仲良いよなぁ~!!」とか「凌空と紡って付き合ってるの~??」とか…いろんな声が聞こえていたが俺らは、そんな声をお構いなしに楽しい時間を過ごしていたんだ。


「そうだ!夏祭り、みんなはどうするの~?」と会話の中で深結が切り出したんだ。


 花火大会やたくさんの出店でみせが並ぶ毎年恒例の夏祭り。もう、そんな時期なのかとどうするかまでは何も考えていなかったが、俺は紡と行けたらいいな…そうとだけは考えていた。


 そんな時、紡がチラッと俺の顔を見ながら「ん~…まだ何も考えてなかったけど…僕は、先輩と行けたら嬉しいかな…///」と可愛く訴えてきたんだ。


 その言葉に俺は、笑顔で「そうだな、一緒に行こうな?」と返した反面、心の中では嬉しくてたまらなくて、一瞬でも気を抜けばみんなの前でも、たがが外れてしまいそうになる…。


 照れながらも、ちゃんとこうしたいと発言してくれる紡の姿を見て、俺もこいつにどんどん惹かれていく…。


「2人ともお熱いねぇ?!」なんて茶化す陽翔に睨みを効かし「お前らだって行くんだろ?」そう返してやると「もちろん♪」と2人息ぴったりに返答してくるもんで…申し訳ないけれど、お前らの熱さには叶わんわ…。


「で?灯里と洸は、行くのか?」

 俺の言葉に洸の顔が急にゆでダコになった。おいおい、聞いただけで…真っ赤かよ…。


「ちょっと~!洸!なんで顔真っ赤なのよぉ!」


「い、いやぁさ…灯里とお祭り行くけどよぉ…浴衣、着てくるらしくて想像したら…さ…」


 洸~!それはやばいって!!!と洸の肩をバシバシと叩く深結にちょっと恥ずかしそうな灯里。


 でも、浴衣かぁ…お祭で浴衣を着ていくのは、憧れというか絵になるよなぁ…。そんな事より、紡の浴衣姿…見てみたいかも…。


 そんな事を思いながら俺たちの会話は、お祭りのことで持ち切りだったんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る