A-2
高校時代はほぼ欠かす事無く、自分でお弁当を作っていたけれど、流石に初日ぐらいはいいよね…?と僕は心に言い聞かせ、お弁当は作らなかった。
軽く朝ごはんを済まし身支度をして、新しい環境への期待と不安を織り混じり合わせながら僕は家を後にした。
大学までは最寄り駅を経て、片道30分ぐらいで到着する。辺りを見渡すと、車で通学する人もいれば自転車で通学する人もいて、高校時代とは違って、僕自身もまた1歩、大人に近付いているんだと感じるようにもなった。
駅のホームで電車を待っていると、1人の男子に目が止まって…
見た目もきっと同じ歳ぐらいの男の子で明らかに何かに戸惑っている様子だった。僕は大丈夫かな…?と様子を見ていると、男の子と目が合い、困り果てた顔をしながら僕に話しかけてきたんだ。
「あの…すみません…大学に向かう電車ってどっちか分かりますか???」
(おいおい…自分の通う大学の行き方ぐらい…しっかり確認しておきなよ…)
男の子の話をよく聞けば、同じ大学の新入生らしい…これは、友達を作るチャンスじゃん!僕は拒むどころか、新しい友達との出会いに自然と笑顔が零れた。
「僕と同じ大学なんですね!僕も新入生なんです。良ければ一緒に行きましょう!」
「本当ですか!?助かります!!」
そう、この出会いこそがこれから僕の心の支えとなる親友、
2人で電車に乗り込んだ後は、お互いの話で会話が弾んだ。
「俺、
僕が朝に感じていた緊張感や不安感は、洸のおかげであっという間に解れて、僕の顔からも笑顔が溢れていたんだ。
それと田舎から出てきた洸は、この近辺の土地勘がなく、輪をかけるように昔からかなりの方向音痴。照れるながらも笑顔で僕に教えてくれた。
「でもさ、方向音痴が功を奏して、紡に声をかけられて…方向音痴も時として悪くないもんだな!」
鼻息をフンっ!と漏らしながら、自信満々にドヤ顔をキメる洸。こんなにプラス思考なのもある意味すごいと思ったけど…僕は心に留めることにした。だって、洸、凄く楽しそうだったから。
話の中で同じ大学で洸も同じ栄養学部に入ることを知って、お互いの気持ちが尚更、軽くなったのも言うまでもない。
「これからもよろしくな、紡!」
「うん、こちらこそ、よろしく!」
初めての通学は、新しい友達が出来たあっという間の30分だった。
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