第31話

 



 ゆったりとした休日です。

 今は邸のサロンで、美味しい紅茶とフィナンシェをいただいております。

 そして最近の学園の様子を思い返しておりました。


 乳繰り合う相手が居ないからでしょうか?フローラが学園に来なくなってから、王太子は生徒会室へ来なくなりました。

 驚くほど仕事がはかどりますわ。

 今まで、ただ同じ室内にいるだけで、どれほど皆の精神的負担になっていたのか判りました。

 特にネイサンは兄であるハロルドも居たので、その負担は倍増していた事でしょう。


 卒業までもう大きな祭事はございません。

 残り僅かな間に、新しい生徒会役員に仕事を教え込まなくてはいけませんが……。

 本来3ヶ月前には新生徒会役員への引き継ぎも終わっているはずでしたが、王太子がフローラと戯れる場に使っていましたので、下級生を入れられなかったのです。


 もっとも、新しい試みを行わなければ何も難しい事は無いのですが。

 実際、私達も何も引き継がれずに生徒会の仕事をしておりましたし。

 前の役員は、王太子が勝手に追い出しましたのよ。引き継ぎなど一切何もされませんでしたわ。



 学園内で出来る事は、ほとんどやり遂げましたわ。

 対外的には、王太子の株を上げました。

 対内的には、王太子は何も出来ない無能者だと知らしめました。

 私達の世代で、私に逆らってまで王太子の味方をする方は居ないでしょう。


 後はフローラが無事に出産をしてくだされば、私達の計画はほぼ完成します。


 卒業式まで後一週間。

 長いようで短かったですわね。

 前回は卒業後すぐに開かれた王太子の誕生日パーティーで、冤罪をかけられたのでした。


 そういえば、今年は卒業パーティーはしないと王太子に伝えましたかしら?

 王宮からは許可・了承の返事を頂いているので、まぁ良いでしょう。

 そもそも学園内には大々的に掲示してありますので、大丈夫ですわよね。

 他の生徒にも、個別に伝えておりませんけれど、皆様知っておりましたもの。


 卒業式から2ヶ月足らずで王太子の誕生日パーティーがあるのです。

 特に今年は成人する年の誕生日なので、パーティーの規模もとても大きいのです。

 立て続けにドレスを仕立てるのは、下位貴族には負担になります。

 地方を治めている貴族には、その往復の旅費も負担になるのです。


 卒業式の後は、制服で行う謝恩会は開かれます。

 まさかその場に着飾って現れるなどと恥ずかしい事はなさいませんわよね。

 如何に自分が無能なのかと、恥の上塗りをする行為です。

 それをしてくださったら、私への最高の卒業祝いなのですが……さすがにそこまでは無理でしょうね。



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