第25話

 



 学園祭は昨年に続き、大成功を収めました。

 そして今年は新たな試みとして、生徒会主催による新しい試みのパーティーが行われます。

 あくまでも学園祭の一環として、お金を掛けずに楽しもうとの趣旨のパーティーです。

 保護者の方や、卒業生の方も参加していらっしゃいますが、会の意図をご理解いただき、皆様一度はどこかでお披露目された正装で参加されてます。


 その様なパーティーの中で、王太子とフローラだけが、新しく作ったドレスと礼服で参加されました。


 新しい正装は製作しないように掲示してありましたのに、まさか生徒会長王太子自らが破るとは思いもしませんでしたわ。

 何度も何度も、フローラのドレスを選ぶように打診しておりましたのに。


 ドレスの貸出しは、生徒会の管理の下で行われました。

 どなたにどのようなドレスをお貸ししたのか、全生徒分把握しております。

 ご実家の財政問題で高位貴族のドレスをお直し出来ないと辞退された方には、こっそり生徒会からお金をお出ししました。

 もう少しこのパーティーが定着し、寄付金などを集められるようになれば、サイズ直しに限りお直し代は全て生徒会で持っても良いかもしれません。


 話が逸れましたね。

 とにかく、生徒会ではフローラにドレスを貸出ししていないのです。

 王太子が勝手に貸出しをするのは、生徒会長であってもあり得ません。

 ドレスを保管している倉庫の鍵は、サンドラが持っているのですから。

 侯爵家のご厚意に甘え、繊維を保管するのに適した倉庫を貸していただいたのです。



 フローラのドレスは、最近になり新しく輸入された遠国の布地を使った物です。

 誰が見ても新作だとすぐにわかります。

 そしてそのドレスと対になっている礼服を、王太子が着ているのです。


 側妃候補だと周知するのに良い機会だからエスコートしてはどうかと、確かに提案はいたしました。

 婚約者以外をエスコートしても問題にならず、だがそれなりに仲が良いと示すにはこれ以上都合の良いパーティーはございませんから。


 現に私は一人で参加しておりますし、タイラーは両手に花です。

 普通のパーティーでは主催者に失礼にあたるので、通常は行わない行為です。

 サンドラは初恋の方のエスコートを受けて、今日は役に立ちそうもありませんが、それも良いでしょう。

 カレーリナとネイサンのように、婚約者と参加している方も多いですが、それも有りですわ。


 かく、学園内のではあるけれど、主催者である側の生徒会長が、自分達の決めた決まり事を無視して参加するなどと、言語道断です。

 しかも新しく対の礼服を仕立てて参加するなど、周りからどの様に見られるか考えなかったのでしょうか?

 考えなかったから、今の状態なのですよね。


 誰もお二人に声を掛けませんわね。

 正式なパーティーであれば、王太子に挨拶に行き、パートナーのドレスを褒め称えたでしょう。

 ですが見せびらかすようにダンスをしても、わざと人の輪に近付いても、誰も声を掛けません。

 それはそうでしょうね。

 皆で楽しもうと準備をしたのに、水を差されたのですもの。



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