24話 飽和の色
都内にあるマンションの403号室
アルタリスク最後のメンバーカラー黒の
相場より家賃が少し高いが芸能人が住むには庶民的な雰囲気のこのマンションで
彼の遺体は発見された。
■
警察の現場検証もとっくに終わり、細々とした私物はもう実家の方に送ってしまったので
大きな家電製品とソファーくらいしか残っていない部屋は随分殺風景になってしまった。
寂しい空間に5台中1台しか動かしてないのにやたら煩い空気清浄機の音だけが響く。
部屋で一人待っていると、チャイムの音が鳴る。
セキュリティのため玄関先のモニターで確認してからじゃないとエントランスにすら入れない造りのマンションで
微妙に画質の悪い液晶には黒の帽子を被り、グレーのマスクを着けた人物が写し出される。
解錠ボタンを押し、部屋の前まで来るともう一度チャイムが鳴らされた。
ドアを開けるとオーバーサイズのアウターに細身のパンツを合わせて、全体的に黒っぽい格好をした彼は軽い会釈をして部屋に入って来た。
小さなボディーバッグを慣れた手つきでサイドテーブルの上に置く。
「遅くなりました」
「いえ…」
クッションもブランケットも片付けたので、飾り気の無くなってしまった1人暮らしにしては大きめのL字のソファーに2人で腰掛ける。
けれど会話が弾む訳もなく、長い沈黙になる。
すると、いつもの癖なのか彼が気を使った様子で話し始めた。
「君だったんだね。知らなかったよ」
「そうでしょうね。私がアスタリスクのファン活動をしている限り絶対に教えるつもりはなかったので」
「何で?勿体ないじゃん?特別待遇して貰えるでしょ?」
「そんな事は望んでないので。私はファンをランク付けしたりしないグループ方が好感が持てます」
「そう。まぁ確かに僕もファン側ならそう思うかな」
朗らかに話そうとはしているが、探るような空気を隠しきれていない。
「私がどこまで知っているのか、知りたいから来たんですよね」
「あぁ…まぁ…ね。知ってるというか、何か勘違いしてないかなってさ。心配でね」
「心配……」
私が噛み締める様に呟くと、レンは「ははっ」と取り繕うように笑う
「他の奴らにも話聞いたんでしょ?どう思った?」
「私は真実を知っているので」
そう言うと彼は笑顔をこべり付かせたまま固まった。
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