田原総一郎異世界転生する?
北比良南
異世界転生するか否か 田原総一郎の生き様
僕の名前は田原総一郎(87歳)
うん。さっき倒れたところまで覚えてる、確か日課のトーストと目玉焼きを作ってる最中だったかな?
その最中で倒れた気がするんだが、ここはどこだろうかね?
一面透き通った世界だ、この光景から察するに僕は死んでしまったのかな、まあ驚きはしない、僕も87歳だからね、それにしても死後の世界っちゅうのはこんな感じなんだね
「田原総一郎さん」
「どこかから声が聞こえてきたな、すいませんがね、ここはどこかね?」
「ここは生と死の狭間です。あなたは今現在倒れて生と死を彷徨っているのです」
どうやらまだ僕は現世に留まっている様だな、それにしても、さっきまで作っていた目玉焼きとトーストはどうなったんだろうか気になって仕方がない。
「そうかそうか、それで僕はこの後どうなるのかね」
「二つの選択があります」
「聞こうじゃないか」
「ラノベの様に他の世界に転生させるのと、このまま現世に戻る事になります」
「まず聞こう、ラノベってなんだね?」
「……ライトノベルというものです」
「ライトノベルね聞いたことがあるね、で? 異世界って具体的にどんな場所?」
異世界ね……興味はあるが、ここはまず声の主に色々聞くのが吉だろう。
「そうですね、主に剣で戦ったり、魔法で戦ったり、今の現代とは違う価値観の世界です」
「ふーん。僕ぁねジャーナリストなんだよ。異世界には興味があっても、戦いや魔法で戦うなんて事は出来ないなぁ」
「それ以外にも価値観自体が違っているの――」
「――あのね、まず聞きたい。なんで僕を異世界に転生させたいんだ? そもそも異世界転生とはなんだね?」
「それはです――」
「――何が目的か聞いているんだ!」
話を聞くといった傍から話を遮る田原氏その田原氏を相手にたじろぐ謎の声の主。
「実は私は個人的に田原さんのファンでして、寿命がじきに尽きてしまう田原さんには他の世界に移って生まれ変わらせてより長く生きていた貰いたい一心で異世界転生をさせたいと思っていたのです」
「するとなんだね? 僕はもうじき死んでしまうんだね?」
「そうです。今生き返っても、三ヶ月後に田原さんは亡くなってしまうんです」
「ふーん。そうか僕は三ヶ月後に死ぬのか」
「ですので異世界に転生して若返ってやり直していただく為に――」
「――ふむ転生すると若返ると、それは興味深い」
「それでしたら、ぜひ異世界転――」
「――うん。なら生き返らせてくれ」
「……え?」
異世界転生か、若返りながら違う人生をやり直す。人によっては其れも楽しいかもしれないね、でも僕はそんなものには興味はないんだよ。
寧ろ若返ってやり直すなんてまっぴらごめんだね、僕は今まで生きてきた事を誇りに思っているんだ。
異世界の興味はあるけども、そんなものと引き換えに今の自分の全てを失うのだけは我慢ならない。
そんな事なら、生き返って残り三ヶ月の寿命を全うするだけの話だ。
「だから生き返らせてくれないかね」
「あの……異世界転生は?」
「そんなものいらんよ。他にもそういうのがいるだろ、そういった権利っちゅうのは好きな人にでもくれてやってくれ」
「本当によろしいのですか?」
「君もくどいね! いいんだよ」
あの声の主のやり取りからすぐ後に病院のベッドの上で目を覚ます。
「田原さん起きられましたか、お加減はどうでしょうか?」
「うん。悪くは無いね」
「実は、田原さんにお伝えしないといけない事が……実は検査の結果」
「余命三ヶ月って事だろう?」
医師の顔が面白い
「あの……なぜそれを」
「はははは、まあどうでもいいじゃないか、それじゃ僕は退院したいからすぐに手続きをして欲しい」
その後退院した僕は、残りの三ヶ月の人生を楽しんでいる、毎日の日課のトーストに沢山バターを塗り、目玉焼きを一緒に食べる。これが田原総一郎だ。
人はそれぞれの生き方がある、僕は異世界なんぞより、日課のトーストと目玉焼きを作るのと現実世界でジャーナリストとして朽ちる道を選んだだけの話でしかない。
「さて、今日もトーストにバターを沢山塗って、目玉焼きをっと……これぞ田原総一郎だ」
異世界転生を選ばなかった僕は、こうして現実世界を楽しむ
田原総一郎異世界転生する? 北比良南 @omimura
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