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「間に合ったようで、何よりです」


紫苑が先程まで居たはずの場所を、呆然と見つめていた私に、彼が声をかける。


「…ありがとう。えーと…、天使さん?それとも、死神さんかな」


「お好きなように」


髭を撫でながら、彼が答える。


「じゃあ、天使で。最期に、良い思いをさせてくれたから」


私の体を、淡い光が包み始める。


どうやら、こちらも時間のようだ。


「私も、良いものを見させて頂きました。

花咲様、またのお越しを心よりお待ちしております」


そうか。


私にはまだ、次があるのか。


「…うん。またね、天使さん」


光が、私の体を連れ去っていく。


もう、何も怖くはない。


私の意識は、そこで途切れた。

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