32
光度を増した光と共に、僕の体が、徐々に霧散し始める。
ー駄目だ…!
「菖蒲!」
無駄と分かっていながらも、彼女の名前を叫んだ。
「…元気でね。君の翼が、大きく羽ばたくことを、祈ってる」
菖蒲は、笑っている。
あの時も、今も。
違うのは、彼女の頬を伝う、涙腺の輝きだけだ。
「待ってる…。君が来るまで、待ってるから!だから、学校で…」
僕の声は、最後まで届く事なく、大きな光と共に途切れる。
「……」
もうそこに、菖蒲の姿はなかった。
目の前では、あの大きな桜の木が、いつとも変わらぬ姿で、佇んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます