卒業式は終わらない

木瓜

卒業式は終わらない


『卒業式、行きたかったなぁ…』


『卒業式?』


『知らないの?卒業式』


『いえ、卒業式というものは知っていますが。私の認識では、唯の一行事に過ぎない物かと』


『そんな事ないよ。友達と、同じ景色を見る事が出来る、最後の時間なんだから』


『そんなに、良いものですか』


『うん。僕はさ、皆と同じ時間を、ほとんど過ごす事が出来なかったから。

せめて、卒業式だけは、行きたかったんだ…』


『……』


『ねぇ、こんな僕でも、仲の良い友人が、一人だけ居たんだよ』


『それは、良い事で』


『…僕、あいつと、卒業式、したい。皆とじゃなくて良い。あいつと二人だけでいいから。

卒業式に、出たい』


『それが、貴方の願いですか』


『うん。それが、僕の願い』


『…かしこまりました』


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