自分軸

第1話

「自己中心的な考え方は改めるべきだ」

　そんなことを耳にタコができるほどに聞かされてきた。

「なんでダメなんだ」

　と聞けば、

「迷惑がかかるから」

　と芯のない答えばかり返ってくる。迷惑を掛け合って、互いに助け合うのが人間だろうにそれを前提にしていない。

　ただ主張を呑み込んで、さらに相手の主張を呑み下せと言う。そんなことしていたらお腹いっぱいで倒れてしまう。

　だから俺は馬鹿の一つ覚えに叱りつけてくる奴に対してこう言うのだ。

「で、そちらはどこまで呑めるんだい？」

　と。そして、

「こちらの要求は伝えたんだ。あとはそちらがどこまで呑めるのか。ここからは話し合いの時間だ」

　と話し合いを求める。和を以て貴しとなす。それには議論を戦わせて協調することも含まれているのだ。唯々諾々と受け入れるのが日本人らしさじゃない。

　日本人だって自分の中に軸を持って生きている。それを思い出させてやるためにも、忘れないためにも俺は今日も自分中心に生きるのだ。