0053 情報戦は海上より始まる
『帰らずの丘』の"大裂け目"から出て、最果て島の最も標高の高い場所から水平線を仰ぎ見る。
と同時に、早速
いずれも"木造"の中型、小型船といったところ。
"名付き"であるイータから伝わってくる『情報』と、それが
遠くの映像を切り取って見ている――というわけではないが、それでも現地で情報収集をしている
≪シータ、船の形はどんなだ。何をもって推進しているか構造はわかるか、外観だけでもいい。あとシータ、ヒュドラの影が"船団"の方に向かったという話だ、裏を取れ。沿岸域を哨戒してヒュドラの反応を探れ≫
反対に、俺からの指示は従来の【
イータ達『哨戒班』の目が捉えたのは、迫ってくる「船団」には
だがしかし、幾度も細かく確認をしたが、船体の左右から
「【樹木使い】リッケルが来たということか? 主殿」
「確か、奴の迷宮の"基本種"は『
≪きゅきゅっ。材料がとってもエコさんな変形合体獣さんだね!≫
「あえて"船"の姿形で来ているのはどうしてだ? そこまでできるなら、大型の水生生物でも模した方がずっと早く来れたんじゃないか」
念の為、ル・ベリには地上部からの奴隷
その上で、俺は"船団"の主の意図に考えを巡らせる。
「イータ達が観察する限りは、甲板に乗組員が出ている様子も無い。中に引っ込んでいるかもしれないが、あの荒波では揺れも相当なことだろう。運んでいるのが【樹木使い】だとしても、中には他の
「テルミト伯が、主殿を調べるか叩くために【樹木使い】の素通りを許すとは思えないのだがな。奴は持てる人脈の総出で【樹木使い】を孤立させ、滅ぼそうとしていた。仮に和解したとして、この短期間で"協力者"が見つかるとは思えないが」
ソルファイドが【人体使い】テルミト伯の元で"傭兵"として働いていた頃、その主な敵が【樹木使い】リッケルという
その後、【闇世】の大公の一人である【幻獣使い】の差し金で
「直接、本人と相対したわけではないが。奴の手勢には『
「――その割には、イータ達が余計な"生物"を狩っているみたいだけれどな」
時折、俺の腰の周りを鬱陶しく回っているぷるきゅぴ達が≪ぎゅぉーすげー≫だとか≪イータさんやっちゃえー!≫だとか、まるでアクション映画を見ている小学生のような緊張感の無い興奮した反応をしているが、存在すること自体が功績であるので思考の外に追いやることとする。
今、俺以上にリアルな感覚や情報を『哨戒班』の
そしてそれらは、いずれも"船団"の内部から飛び立ってきたものであるという。
「テルミト伯の
「昨日の怨敵であっても、利害が一致すれば手を結ぶ、か。【樹木使い】リッケルのところに有効な"飛行系"はいないんだったよな?」
「制空権では、終始テルミト伯が優勢だったからな。環境も環境だ、『
「ということは、今はそうではないわけか……"次"があるとしたら、そこでは警戒する必要があるかな」
ソルファイドの分析通り、"船団"から飛び立ったらしい「目玉」と「片耳」達は、片っ端からイータ率いる
数体を解析と検分のために、可能なら捕らえろと命じたが――【情報戦】対策はきっちり行われているらしく、敗れたり捕まりそうになった瞬間、この飛行する顔面パーツどもは
「和解の決め手は、やはりリーデロットなのか。ル・ベリの母親が、そんなにテルミト伯とリッケルにとっては重要人物なんだな?」
「理由は異なるだろうが。主殿も知ってる通り、およそ
≪……説明不足の赤ト、
「なるほどな、それを見せられたら【人体使い】の名に賭けて、原因を特定したくなるのも道理かもしれないな。リーデロットの影を散らつかせれば、リッケルは
≪きゅきゅ。でもソルファイドさんの
ウーヌスが会話に割り込んでくる。彼らは俺と知識を共有している"副脳"であり――
「リーデロットが『最果て島』に流れ着いたことを知っていたか、そもそもそうなるように仕向けていたんだろうな。その辺りでも、かつてリッケルと何らか揉めたってところかもしれないな」
おそらく、テルミト伯の当初の目的は、最果て島の
だが「船」さえ用意できれば"戦力"を最果ての島に上陸させられるならば、そもそもテルミト伯がそのような迂遠な方法を取る必要が無いと思われた。
最初に"船団"の報告を聞いた時は、それがどれぐらいの規模であるかと警戒もしたが――。
「まだ大丈夫だろう、主殿。あれでは
ソルファイドの呟きに合わせて、沿岸域に警戒網を広げさせ、海流の乱れや海中の異変を注視させていた、
――最果ての島を己の庭とし縄張りとして外来者を"選別"する海の主たる"
その指針が変わっていないのであれば、あの"船団"の運命も同じものとなるだろう。
そう考えて、俺は即座に『潜水班』達に、更なる
きゅぴきゅぴ
暴力の化身たる
「十中八九は威力偵察。こちらの反応と対応を文字通り見聞するのと、後は
『哨戒班』のイータ達には、これから始まる
ソルファイドが送り込まれた頃とは異なり――今や、最果て島はその全周の海岸部分も含めて、完全に【エイリアン使い】の戦力によって掌握している。同じ手は食わず、流れ着く少数の工作員があれば、即座に発見して『監視班』によって補足され『遊撃班』か『奇襲班』の襲来を受けることになるだろう。
この他に、大穴として残っている可能性があるとすれば、それこそウーヌスが言うような「変形合体」をあの"船団"が突如行って力技で
つまり、今回は完全な様子見と威力偵察に終わるだろう。
そのため、
こういう「切り替え」ができるのもまた、
切れ者のモノに
【迷宮経済】
■収入の頁
・総魔素収入 …… 約 7,770単位
・総命素収入 …… 約11,130単位
(詳細)
・魔素収入(迷宮核分)…… 約2,000単位
・魔素収入(領域定義)…… 約4,400単位
・魔素収集倍化 …… 効果:5%UP
・魔石収入(凝素茸分)…… 約1,050単位
<魔素収集5基>
・命素収入(迷宮核分)…… 約2,400単位
・命素収入(領域定義)…… 約5,200単位
・命素収集倍化 …… 効果:5%UP
・命石収入(凝素茸分)…… 約3,150単位
<命素収集15基>
■支出の頁
・総維持魔素 …… 約5,680単位
・総維持命素 …… 約9,209単位
・眷属維持コスト削減 …… 効果:3割カット
・凝素茸のコスト削減 …… 効果:12単位ずつカット
■収支の頁
・総魔素収支 …… 約2,090単位
・総命素収支 …… 約1,921単位
【現在の眷属数】※進化、胞化未完了を含む
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結論から言えば、
基本的な設定、サイズ2.0では、1日ごとに10個の魔石または命石が生産される。そしてそれらを魔素・命素に換算した場合、結晶1つで7単位、つまり1基で1日70単位の魔素または命素の生産となる。
他方、維持コストは1基あたり魔素60、命素60であり、ここに俺の技能である【眷属維持コスト削減】の3割カットが乗って魔素42、命素42であり、これだけでは1日の収支としてはむしろマイナスになってしまう。
しかし、
このことから、俺は"魔素担当"は【凝魔素効率化】を、"命素担当"は【凝命素効率化】を最大の10レベルまであげて、さらに余った技能点は【削減】技能の方に振った。これにより、
これは維持コストの関係から、「第2世代」のエイリアン=ビーストならば1基で1日10体程度、「第3世代」であっても1日数体程度を養うことができることを意味している。
個体ごとの相性差や、圧倒的な個の力を持つような存在への備えは必要だろう。だが、同時に数の力という意味での基本的な戦力を整えるという意味で、『結晶畑』の構築が最優先事項となっていた。
≪ウーヌス、アン、ウーノ。お前達は改めて迷宮製作の指揮を執れ。休みは無しだ、『環状迷路』と『結晶畑』の拡張をとにかく急げ≫
≪お任せあれなのだきゅぴ!≫
≪なのだ~≫
≪わかりました、造物主様!≫
ソルファイド曰く、自治都市『潮幽霊のアモアス』の"幽霊船"の技術によって彼がテルミト伯より、最果て島まで送り込まれた航海日数は10日程度の距離であった。
ならば、リッケルの"木造船"が同等か、念の為多少優秀な船であると仮定しても、大陸の南南西岸からは7~8日程度の船旅であろう。テルミト伯の「情報収集用」の眷属が乗っていたことと合わせて考えれば、この威力偵察の第一陣が沈んだことはすぐにそれぞれの本拠地に伝わっていると見なければならない。
俺としては、できることであればもう2度、3度じっくりと
ちょうど、俺が出てきたことで
――備えるべきは、【人体使い】であるか、それとも【樹木使い】であるか。
もし【樹木使い】が主力としてやってくるならば、ソルファイドの目から見てもいささか「異常」に発達しすぎているらしいこの地上部の"森林"は、リッケルとその配下たる『枝魂兵団』、そして樹木系の魔獣の眷属達にとっては有利な地形であると言えた。
地上の開発が大幅に遅れること、生物資源を全て喪失することを決断できるならば、こちらには
だが、気になるのは、こちらに『火竜の末裔』たるソルファイドがいるということをリッケルもテルミト伯も知っているはずだ、ということであった。そして、ソルファイドは既に"傭兵"として、テルミト伯の尖兵としてリッケルからすれば相性が最悪の敵として、幾度となく対峙している存在である。
しかし、それでもなおその"樹木の迷宮"ごとソルファイドに焼き尽くされることなく戦い続けてきたということは、
――まず、何らかの対策が用意されていると見て、警戒しすぎるということはない。
特に、相手がもしも俺を"新人"だとでも侮ってくれているのであれば――【樹木使い】を前面に出して、ソルファイドによって焼かせようと誘惑し、その裏を掻く、というような筋書きがあってもおかしいことではない。
そう考えれば、テルミト伯とリッケルの立場の違い、そして関係性。
どちらも執着があるとして、
そして、
「なぁ、ソルファイド。温泉好き、風呂好きの
あえて、露骨に、わかりやすく【火】を使うと見せてやろう。
【樹木使い】を一気に倒すために、【火】を存分に活用するという誘いに乗ってみよう。
その上で、【人体使い】と【樹木使い】の反応を見てみようじゃないか。
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