ガンダムからZガンダムへ

 全てのガンダムを試聴して生きてきた人間として、記しておこう。

 初代ガンダムの続編として始まった、Z(ゼータ)ガンダムの話を。

 放送当時、どんな気持ちで試聴していたかを。



 それは、続編というには、あまりにも異質だった。



 当時、俺は小学五年生から六年生。

 初代ガンダムは何度も再放送で試聴し、ガンプラも一通り愛でていた。

 学研の雑誌で初代ガンダムの続編が放送されると知り、そのビジュアルにまず度肝を抜かれた。

 シャアにしか見えないキャラが、クワトロと記載されている。一瞬、雑誌が名前を間違えたのか、続編の存在そのものが誤報ではとも勘繰った。

 同じページで紹介された赤いリック・ディアスは、シャアザクやシャア専用ゲルググに比べると、シンプル過ぎて動くシーンが想像出来なかった。

 そして主人公と紹介されたカミーユは、美少年過ぎて、なんだかロボットアニメの主人公としては頼りなく思えた。

 ファの長い足には、すぐに見惚れたけど。


 そして、第一話放送当日。

 リアタイしましたとも。


 始まって早々、雑誌を見た時に感じた懸念など、破壊された。

 あまりに洗練された神作画のオープニングは、一生涯忘れられない最良の記憶として、残り続ける。

 

 Zガンダムは、続編と銘打ちながら、作風が全く別の作品だった。

 初代ガンダムが「戦火に巻き込まれた少年少女達のサバイバル」とするなら、Zガンダムは「重厚な大河ドラマ」の空気で進んでいく。

 そこから発せられる違和感は、味わい深い芳香でガンダムファンを惹き寄せて、嵌めていく。



 初代ガンダムからの馴染みのキャラクターが少なからず登場するのに、同じポジションにいる者が一人もいない。皆、変化している。


 ガンダムは、強力な特級兵器から、Mk~Ⅱという平均的な量産型に。

 初代の頃は、ガンダムが登場しただけで敵側はガクブルでしたが、Zでは「はあ? 旧式のマイナーチェンジだろ」「どこがMk~Ⅱだよ?」という、舐めプの対象。

 操縦するカミーユの戦闘センスが高いので、敵側が苦戦して認識を改めるというのが、前半戦のセオリーになります。Mk~Ⅱ、ガンダムなのに不憫です。


 シャアはクワトロという偽名で、ジオンではなくエゥーゴという組織の大尉に。ぶっちゃけ、悪役ではなく、善玉の主人公の如き扱いで。

 試聴している方は、クワトロが少しずつジオン時代の本性をチラチラと出してくるので、緊張感が増すわ増すわ。

 特に「シャア・アズナブルという人の事を、知ってるかな?」とカミーユに質問した時の緊迫感と言ったら。

 そこで察しが悪くて「馬鹿な人です」と返答を結んでしまうカミーユに、もう気が気でなかった。レコアの顔色を見て、気付こうよ(笑) 


 一見では変化が見受けられないブライト艦長ですら、左遷されてティターンズにタコ殴りにされて、初期段階で連邦軍を抜けてエゥーゴに転職する。

 そしてアムロは、モビルスーツに乗せてもらえずに、腐っていた。

 

 とんでもない続編だった。


 主人公カミーユは明らかに病んでおり、名前を少し笑われただけで、軍人に殴りかかる。釈放されそうになっても、再びキレて暴れ出す。

 小学生でも、一話で、このキャラの人生は終わったなと思った。

 ファには勿体ない。

 今でも、そう思う(笑)


 

 そんなにも変化に富んでいるのに、というか変化しかない状況で、ハマーンとシロッコだけは、シャアをシャアとしか呼ばない。

 ラスボスはラスボスを知るとでも言おうか。

 シロッコはシャアの野心を見透かしているし、ハマーンはシャアがネオジオンに合流する事を疑っていない。というか、まだ合流しない事にキレている。

 最終話では、過去現在未来の三作品のラスボスが三つ巴の戦いを繰り広げる。

 脳が、どうにかなりそうな大乱戦だった。

 シャアはまたしても生死不明の状態になり、主人公が発狂。

 初代の大団円と違い、Zはモヤモヤする狂気を遺したまま、ZZ(ダブルゼータ)へとシームレスで物語を繋いで終わる。


 で、とんでもない続編の続編であるZZも、とんでもない続編になった。

 何と、明るいコメディに百八十度路線変更したのである(笑)

 信じられる?

 これだけのシリアスな大河作品を見せておいて、「明るいガンダム」、しかも主題歌が「アニメじゃない」

 リアクションが不可能だったよ、十二歳の俺は!!

 

 何もかも、規格外だった。

 その続編への繋ぎ方も。

 NHKのガンダム総選挙でZガンダムが一位に選ばれたのは、伊達ではっない。



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