第18話 行き違い
驚く程に、彼らは酸と火薬が理解出来なかった。
何かこう…かえって、神がかった見えず強い力が加わっているという印象だ。
大工の方は正直知らなくても大きな問題にはならないのだが、軍の司令が火薬を知らないのは問題だと思って何時間も語り続けていた。彼…えっと、名前は…海軍司令の性格を知らなければとっくに叱っていただろう。
結局彼らに火薬も酸も理解させるのは諦め、説明文だけは覚えさせた。海軍司令には陸軍司令の分を含めた二人分の説明文が書かれた紙を渡した。そして樽の試作を見に工廠を三人で訪れると、
「颯様、試作はできていますが…」
彼の背後にはドラム缶のような樽があった。
「あ〜、まだ独特な膨らみが作れないのか。でも殆どの用途でそれで十分だから取り敢えずそれの量産を部下に始めさせて。」
あの膨らみがあっても中身が入っている時の移動が少し楽になるだけだ。
「はい。曲げ方さえ分かれば直ぐに作れるのですが。」
「茹でた木材を間髪入れずに曲げてそのまま乾くまで固定してみて。」
「早速やってみます!」
まさかスキー板の自作した経験がこんなところで役立つとは…
「できました。」
本当に曲げ方だけが分からなかったらしく、準備されていた木材を直ぐに行った通りに曲げた。
火を焚いて乾燥を少し早めたとはいえ時間はかかる。乾燥に数時間待ったが結局他の二人もその間、無駄に綺麗で長いベンチに座って待っていた。
「ところで船はどうするのですか?」
司令が聞く。
「これをずっと大きく作って、潜水艇を作る。資材はもうここに運び込んであるよな?」
「はい。もう切り終えて、あとは曲げて組み立てるだけです。何しろここ二日はできることがなかったので。」
もっと早く様子を見にくればよかった。結果的に時間は無駄にはなっていないが、…あれ?二日って言った?
「という事は初日にはそのまっすぐな樽は出来ていたのか?」
「はい。どうせ強く縛り合わせると十分に変形してくれたので、多少の誤差は問題ない事がわかりました。」
多少って…これでもかなり硬い木だからどんなに小さな誤差だったんだ?
「…そう。次からは出来た時も、問題があった時にも直ぐに報告してくれ。じゃあその部品を見せてくれる?」
「あなた達が座っている木ですよ。」
確かに長く、幅は50cm弱で、断面は軽く台形で、8cm程の厚さのものがたくさん積まれたものだった。
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