第96話藤壺の女御、懐妊する


え? 

誰の子?

原作同様、僕の子なんて言ったら兄妹まとめてコロコロしないといけないかな?

でも兵部卿の馬鹿宮は僕が思っていた以上のアホだった。なんと、腹の中の子は、桐壺帝の子供だと言いだしたんだよ~。

アホだ!ドアホだ!!


一度も御手おてがついてないことは宮中の者が全員知ってるっていうのに!


「帝の子供でない事は明らかでも兵部卿の宮からすれば『今上帝の御子が誕生する』と言うしかありません。今頃、大臣方や帝に謝罪行脚でしょう」


「謝った処でどうにもならないと思いますけど……」 


「この場合、お産みになる女人が皇女ですからね。下手に罰することが出来なのも事実なのですよ」


僕は知らなかった事だけど、先の帝。つまり、兵部卿の宮や藤壺の女御のお父さんは『名君』だったらしく、市井の暮らしを良くしようと奔走した人物で民衆に大変人気があった。年寄たちは今もそれを知っている。現役引退して隠居生活を送っている元権力者たちの忠誠心は今なお健在らしい(うちの父とは大違いだ)。そんな素晴らしい帝の忘れ形見を「守ってあげたい」と思う者が後を絶たないのだ。


「一番良いのは藤壺の女御とお生まれになる御子が仏門に入る事なのですけど……兵部卿の宮が問題になるでしょうね。皇女なら兎も角、もしも皇子ならば……どうなることか……」


大宮の心配が的中しない事を祈るしかない。


「お母様も、殿も……そう眉間に皺を寄せて考えてもよい事はありませんわ」


「ほほほ。葵の言う通りですね。まだ生まれてもいないのですから」

 

その後、葵の上と大宮とでお菓子を食べながら笑いあった。




問題児の兵部卿の馬鹿宮は僕でも驚くほど斜め上の行動を止めなかった。止めたら負ける!とでも思っているのか全く収まらないうちに、藤壺の女御が里下りした。


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