第56話天から与えられた美貌と才覚
「それにしても、その歳で『史記』を読めるなんて流石だね」
半ば感心、半ば呆れといった様子の兄上。
まぁ漢文は、苦手でも無ければ得意でも無かったし…。それに一部は、高校の時に習ったものだ。
特に、『史記』に関しては、
部分的にしか読めない文章でも、何となく何の記述であるか推測できる所が多い!
推測しているだけで、正確にあまり読めてはいないけど……。
「兄上~。これ何て読むの?」
「どれどれ?」
…
……
すっごく優しくて、良いお兄さんです。
原作に近い雰囲気の人で、ヨカッタ、ヨカッタ………。
それに。
「光は新しい文学を御作りしていると聞き及んでいますよ、この兄にもきかせていただけませんか?」
「/////はい」
僕の拙い日本昔話にもニコニコと付き合ってくれる兄上。
天使だ。
本当にあの父の息子か?
遺伝子の神秘!
いや、きっと弘徽殿の女御様の血筋だ!
「光るには非凡才能があるようだ。兄として鼻が高いよ」
よしよしと頭を撫でてくれる。
兄上に頭を撫でてくれるとなんだか気持ちいい。
これがセラピーか!
その後も兄上からの褒め言葉とよしよしと撫でてくれる手に魅せられ、僕は頑張った。
どこのスパルタ教育だ?と思しき父親が用意した教育係たちの蹴散らし、文武両道の皇子を目指した。
それがいけなかった。
いつの間にか、僕は「天から与えられた才を持つ皇子」として世間に認知されてしまった。
「流石は、主上、御自慢の皇子」
「文武共に抜きんでた才能をお持ちだ」
「御年を重ねるごとに美しさも光り輝くようではないか」
「これほど美しくさい豊かなお方は、この先、お目にかかれまい」
「天から二物どころか何物も与えられていらっしゃる。前世にどれ程の徳を積んだことやら」
「実に惜しいですな。これほどの皇子が東宮でないなどと……」
勃発される皇位問題。
僕の評価が上がるにつれて、何故か、桐壺の更衣の評価が変わってきている事態にも頭が痛い。
「これほどの皇子をお産みになった桐壺の更衣殿を寵愛する帝の気持ちが分かるというもの」
「さよう。悪しき噂が多いが、所詮は後宮の女人たちの妬みに過ぎん。真相など分かったものではないぞ」
「主上の愛妃様だ。素晴らしいお方に違いない」
どうしてそうなる?
まあ、噂してるのは下っ端に公卿だけど、話がややこしくなるから止めてもらいたいよ。
僕と兄上を争わせたいの?
お陰で、母方のばー様から“東宮を目指せ”という内容の手紙がひっきりなしに届いてる。
誰だよ?ばー様の情報を与えたのは!
あの人の手紙は巻物並みに長いんだよ。
読む身にもなれ!
最近じゃあ、あんまりにも鬱陶しいから、読まないで放置してる。
寒くなったら手紙を燃やす予定だ(焼き芋でもしようかな)。
物理的に離れている祖母よりも、媚びを売ってくる公卿の方が問題だ。
おべっか言うだけならまだしも、賄賂まがいの贈り物が最近多い。
大弐の乳母曰く、突き返すことは礼儀に反する。と、いう事なので、仕方なく受け取ってお返しの品を渡しているけど、何とか対策を立てないと不味い。
「これ、光!」
「あ、弘徽殿の女御様、すみません」
「先ほどから上の空でどうしました?」
「あ、煩くいってくる輩が増えまして、対処方法を考えていなところです」
「そうですか……あなたが気にすることはありませんよ」
「はい」
にっこりとほほ笑む弘徽殿の女御は美しい。
いつもは後宮の女主人として、矜持の高く振る舞っていらっしゃるせいか冷たい印象になっちゃてるけど、家族だけの場所(桐壺帝除く)では今のように柔らかく微笑んでいる事が多い。
ギャップ萌え、とはこの事だよ!
誇りたくて、とびぃっっっきり気が強い性格だけど、愛情深いというか、母性が強い女性なんだ。
パパ上は弘徽殿の女御の何処が気に入らないのかな?
こんなに魅力的なのに(いらないなら僕にくれ)。
権勢高い女性が自分だけに見せる可愛らしい一面は何物にも勝る魅力だよ。
どうも父親とは女性の趣味が合わない。
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