君との春は桜淡に溶ける
高月里桜
はじめに
その日の葬儀は、柔らかな桜に包まれた、でも降る雨は容赦なく心を濡らす
春の真っ只中にとり行われた。
生前の彼女がいかに多くの人に愛されていたかがよく分かる証拠に、墓の前では
沢山の人が涙を流した。
あいにく、僕だけはそうはならなかったけど。
彼女は桜が好きだった。
そんな子が、病に倒れて亡くなるなど、やはり僕には信じられなかったし、彼女が
死んでから、ようやく死について考えるようになったのも事実だ。
ただ一つだけ、良かったと思えたことがある。
それは、彼女の葬儀に大好きだった桜を添えてあげられたこと。
これが、彼女にとって幸せなことの一つに入ったかは知らない。それでも良かった。
この先もずっと、彼女の心のどこかに僕がいるとするならば、もうそれで…それだけで良かった。
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