邪な目覚め

@nyaos

第1話 目覚め

 1980年7月10日

 ここは、裕福ではなく平凡だが幸せだった。

 最初で最後の話。

 小鳥の鳴く声が聞こえる。

 カーテンの隙間から日が差して、目を閉じててもわかる眩しさで瞼が開いた。

 白い天井を見つめながら俺は布団から体を起こす。

 寝ぼけながら着替えようとすると、窓の外から少女の声がする。

「金田、起きろ農作業手伝え!!」

と耳鳴りがするくらい大きな声で言ってくる。

「わかった。だから一旦黙れ」

 嫌々に返事すると少女は、座りながら収穫にもどった。

 ともあれ作業着に着替えテーブルに置いてある朝ご飯を食べて外へ行く。

 作業場に行き鎌を取り出し、少女に話しかけた。

「遅れてごめん」

「遅い!皆朝4時から作業してるの、そしてあんたが来たのは7時、もうあと少しで今日の朝の作業終わりよ。」

「だからごめんねって、許してくれ。」

 と俺は、頭を下げつつ自分のやる場所に行き鎌でキャベツを取り始める。

 すると彼女は、からの小瓶を地面に落とし慌てて拾いあげた。

「それは何だ?」

 落とした小瓶の事気になり聞いた。

「あんたには、関係ないでしょ。」

「そうか、それは申し訳ない。」

 彼女に小瓶の事をはぐらされ作業を開始した。

 そして、時はたち村の端にある神社に集まり皆でとれたてのキャベツを食べた。

 食事中に、一人の男が喋り始める。

「やっぱ取れたての野菜は美味いな、だが少し苦味あるだからこそ酒が進む!」

 そう男が言うと俺が返すように言った。

「俺にも飲ませてくださいよ」

「いいぞ」

 と男がいうと、彼女が喋りかけてきた。

「金田!未成年なのに、酒を飲もうとするな。そして、中村さん、酒をあげようとしないで下さい。そして、昼から飲み過ぎですよ、午後の作業どうするんですか!」

 そう言ういわれ、2人とも頭を下げ土下座させられた。

 また申し訳なさそうに中村が喋る。

「雪ちゃん昼は、仕事するから大丈夫」

 と中村が言い皆で笑い、話ながら野菜を食べてゆく。

 だが、雪だけ野菜を、残した。

 その様子を見て、中村が疑問気味に言う。

「なんで食わないんだ?」

 と言うと雪が答える。

「お腹空いてないから。」

 そんな会話が終わり。

 皆食べ終わった皿などを片付け。

 中村が神の代わりの大仏の前に血を用意した。

 この村は、昔から、1ヶ月に一回神に血を捧げると農作になる言い伝えがあり。        今は、その儀式を行なっている。

 そう中村さんの仕事は、死んだ人の血を取りそれを神に捧げると言う仕事。

 だから中村が喋った。

「日村のじっちゃんいつもみんなを元気付けてくれてありがとう。」

「皆様、目を瞑って礼」

 皆で目を閉じ礼をする。

 目を開ける頃には血は無くなっていた。

 ともあれ農作業に戻って行く。

 こんな平凡で幸せな日々が続くと思っていた。

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