第二章・君の名は 君の名は。 / 4 (テキサスホールデムルール説明②)
3・ベッティングラウンド1 プリフロップ
○各プレイヤーはチップを賭けるかまたは勝負から下りるかの宣言を行う
「見たら、順番にチップを賭けていくベッティングラウンドよ。ここでの駆け引きをプリフロップといいます。じゃ、テツさんから」
「まだ二枚しかないのにか」テツが姿勢を戻しながら尋ねた。
「後から増えてくんだよ」スタッドを理解しているジョーが言った。
「カードの♠♡♢♣のマーク、いわゆるスートは強弱に関係ないけれど、書かれている数字には強弱があるわ。なら、二枚でも強弱はあるわよね。
「だが、ポーカーの強い役なんて、滅多に出るもんじゃないぞ」と、テツ。
「出なくてイイのさ。賭けなんだからな。……光恵、先に進めた方が多分理解が早いぞ」
ジョーの言葉に、光恵は頷く。
「どうするテツさん? ここでできるのは、〝コール〟か〝レイズ〟か〝フォールド〟。コールは、いまお義父さんが出している額と同じになるようにチップを賭けること。今出した参加料も賭け金の一部と考えていいわ。レイズは賭け金を吊り上げること。フォールドは、賭け金を諦めて勝負から下りる選択よ」
「コール、ってのは、丁半バクチで〝コマを揃える〟のと似てるな。丁方と半方の賭け金を同じにするのと同じで、全員の賭け金が同額にならないと先に進まねぇんだ。レイズは、揃うまでの額を上げることだ、今度は俺が揃えなきゃならなくなる」ジョーが言った。
「
「今からじゃ無理ね、それは勝負から下りるってこと」
「下りたらどうなる」
「最後まで下りなかった人の勝ち。今回はテツさんお義父さんのふたりしかいないから、テツさんが下りたら自動的にお義父さんの勝ち」
「二枚配っただけで終わっちまうじゃねぇか。そんなのアリか」
「あり、大あり。テキサスホールデムは一回の勝負がとても短いの。細かい勝負を何百回と繰り返すものなのよ。だから、個々の勝負は運で決まるけど、勝てる確率が高い方を常に選んでいけば、全体では勝てる。そういう計算が求められるゲームよ。
そしてもうひとつ、相手を下ろせば勝てる、ってことも重要。自分の手が弱くても強い手のフリをして、強気に賭け金を吊り上げて相手を怯ませる戦い方もあるわ」
「花札や麻雀とは違って、役の有る無しに関係なく賭けられるんだ。相手の手を予測しながら、な。チップは種銭ってだけじゃなく、駆け引きの道具でもあるわけさ」ジョーが補足した。
「様子見したいが下りるのも癪に障る……ってときは、〝コール〟、って言ってコマを揃えればいいのか」そう言ってテツは、ジョーが払ったブラインドと同額、すなわち2$になるようチップを出した。
「おいおい、意図まで口に出すなよ」ジョーが言った。「こっちにゃまだレイズする権利がある。全員がコールするか下りるまで、駆け引きは続くんだから。───とりあえず、コールだな? 俺も先に進めたいから、コールするぞ。ここから先は、俺も未知の領域だ」
4・ベッティングラウンド2 フロップ
○ディーラーが共通札を三枚開く
それを見て、各プレイヤーはチップを賭けるか勝負から下りるかを宣言する
ジョーの言葉を受けて、光恵はふたりの出したチップを中央に集め、場に三枚のカードを並べた。
♠Q♡9♣2
「これが
「ふむ……」
「さて、テツさん。ここでできるのは、〝ベット〟か〝チェック〟か〝フォールド〟。
〝ベット〟はチップを賭けること。今みたいに、どこからもチップが出ていないときは、〝
〝チェック〟は手番をパスすること。さっき様子見はなしと言ったけど、誰もチップを場に出していない今だけは可能よ。ただ、誰かがベットしたら、その後またコールかレイズかフォールドかを決めなくちゃならない。
〝フォールド〟はさっきと同じで下りることだけど、今は下りるくらいならチェックで相手の出方を見た方がいいわね」
「ふむ。なら、チェックだ」
「お義父さんは?」
「ここで俺もチェックすると、どうなる?」
「全員チェックした場合は、〝チェックアラウンド〟といって、そこでこのベットラウンドはおわり。新たな賭け金はゼロでコマを揃えたってことになるわね」
「ならこっちもチェックだ。次」
5・ベッティングラウンド3 ターン
○ディーラーが四枚目の共通札を開く
それを見て、各プレイヤーはチップを賭けるか勝負から下りるかを宣言する
光恵は、先ほど出したカードの横に、もう一枚カードを開いた。♠6。
「四枚目の共通札よ。〝ターン〟と呼ばれるわ。手札と合わせて六枚、そのうち五枚を選んだとき、一番強い手は何か考えて。
例えば、これでスペードが二枚出た。もしあなたたちのどちらかの手札がスペード二枚の組み合わせだったなら、スペードが合わせて四枚使える。最後の共通札もスペードだったなら、フラッシュが完成する。そんなふうに、五枚必要な強い役があと一枚で完成する、麻雀でいうリーチの状態を、テキサスホールデムでは〝ドロー〟というわ、宣言して役がつくとかはないけどね。
さぁ、ここも、〝ベット〟〝チェック〟〝フォールド〟の選択よ」
テツは何度か首をひねって言った。
「ベットしてみるか。いくら出せばいいんだ」
「最低額だけ決まってるわ、さっきお義父さんが払った参加料の額、つまり2$よ。それ以上なら、今プレイしているルールでは、持っているチップの範囲でプレイヤーの自由。なんなら〝オールイン〟、つまり全額を賭けてもいい」
「それは豪気だな。なるほど、バクチだ」
「だから人気があるのよ。でも、気をつけて。他のバクチと違って、ポーカーは、いくら賭けたところで、相手が応じなければ一銭も稼げない。胴元は支払わないし、麻雀のように役に応じて決まった額が手に入るわけじゃない。他のプレイヤーが出した額しか手に入らないし、負ければ自分が出した額はすべて奪われる。『相手の手札が何で、いくら出してくれそうか』まで読んで、駆け引きをするの。日本にはなかったタイプのバクチよ」
「いくら賭けてもいい。多すぎれば応じてもらえない。少なすぎれば勝てても儲けが少ない。ふぅむ。どれくらいがちょうどいいんだ……?」
「そこらへんは私も、細かい計算は知らないけど……今のところ、お義父さんたちが賭けた額は全部で4$よね。この賭けた総額のことを〝ポット〟というのだけど、この額と同じならポットベットというわ。ポットの半額をハーフポットベットと言って、弱気な印象で相手にチップを出させやすい。ポットの額より多い場合はオーバーポットベットと言って、かなり強気な印象を与える」
「ふむ……」テツは考え考え、そして慣れぬチップを「ひぃ、ふぅ、みぃ」と数え、4$をベットした。ジョーはコールし、4$同じように数えて場に出した。
ポットの総額は12$となった。
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