午前二時

星 太一


 結局、都市伝説というものは人の作った面白おかしいお話というだけで、現実に存在などするわけはないのでした。


世界一怪奇現象が発生する町とか皆が大口叩いて言うものですから、余計な期待をしてしまっただけで。ああ、何もかもが徒労に終わりました。わざわざこんな時間に寒空の下、母を騙し、こんな格好をしてまで駆けてきたというのに。

 私の期待するものはどこにもなかった。

 もうお終いです。


「それは私に会えた……それじゃあ意味には成り得ませんか?」


 なりましょうか。私が期待していたのは未来を見せる鏡です。これからの私を映す鏡。それ以外には正直興味がありません。


「それでは何故、貴方は未来を見たがるのですか? 未来を見たってどうせ運命は変えられない。同じ道を行くだけだというのに」


 ……貴方にはどうせ分かりますまい。この紙きれが握る私の苦労と、私の心労を。


 私はこの大学に受からなければもう、死ぬしかないんです。


「どうぞ続けて」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る