別府・湯布院温泉不倫旅行

温泉放浪記

第1話 別府温泉へ

ほんの半年ほど前までは、新入社員として配属されて来たばかりの佳子と、親子位歳の離れた自分が、まさか、温泉旅行に一緒に行く様な仲になってしまうとは、思ってもいませんでした。

いや、実は既に研修中の彼女を一目見た時から、心を奪われてしまっていたのかもしれません。

村下孝蔵さんの初恋の歌詞のように、遠くからいつも姿を探していました。


昨日までは、出張と偽っている今回の旅行のことを、妻や娘には悟られないように、努めて明るく振る舞っていたりしました。


岡山駅で、あらかじめコインロッカーに入れていた私服に着替え、彼女と合流

しました。 合流したといっても、一緒にいる所を知人に見られたらまずいので、新幹線の待合所でも距離を置いて座ります。


慌ただしく出勤している人達を横目に、背徳な気分と、まるで青年の頃に戻ったような、初々しい高揚感が入り混じった感じです。


07:56分発の、のぞみ75号で小倉に出発です。

やっと彼女と、隣合わせの席に着くことができました。 平日なので、出張客が少しいるだけて、空いています。


新幹線の中で、話をしている最中に彼女がふと言いました。「入社した頃から、よく見ていたでしょう。 すぐに分かってたんだから。」

心の中を、ずっと見透かされていたようで、動揺が止まりません。

小倉で、10:09発の特急ソニック11号に乗り換えて、別府駅へ向かいます。


昼前に別府駅に到着しました。  思っていたよりもこじんまりとした駅です。

スーツケースをコインロッカーに預けたあと、別府市内と湯布院方面の路線バス

2日間フリー乗車券を購入しました。これで観光の足が確保できました。


駅前に出てみましたが、飲食店があまり見当たらなかったので、駅構内にある、豊後茶屋へ。 10月の初めですが、別府は岡山よりも暖かいです。少し汗ばむ

位でしょうか。

海老天ぷらとざるそばのセットを注文しました。


岡山から、遠く離れた場所なので、もう人目を気にする必要はほとんどありません。 解放された気分で、旅を楽しめそうです。

彼女が、「冷たくて、美味しいね。 食事の後、どこを観光してまわろうか?」

というので、「地獄めぐりに行こうか、修学旅行以来だし。」と答えました。

すると、彼女が、「やっぱり、おじさんだね。私達の時はディズニーランドだよ?」と悪戯っぽく言って、見つめて来ました。

笑うと、有村架純さんに良く似ています。  また、動揺が止まりません。




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