第42話 生きるということ

📕

「どれがいいかな? パン泥棒も面白そう。にする?」

お孫ちゃんの絵本を買ってあげたくて、娘夫婦に聞くデバネズミ。

「このシリーズも赤ちゃんに人気だよ」

私はそう伝えてから一人で探す。面白そうな絵本を探す。探す、探す。



🏠

「パパ」「ワンワン」など一語を言い始めたお孫ちゃん。

物には名前があると覚えはじめたお孫ちゃん。

平仮名に興味を持ったタイミングで私は娘の時にもしたあることをする。


『わたしはすきになりたいな……ねぎもトマトもおさかなも……』

紙に大きく書いてお孫ちゃんの目の届くところに貼っておく。

金子みすゞの詩。他にも『いぬ』と『明るい方へ』

『すずめのこ そこのけ そこのけ おうまが とおる』

俳句には雀と馬の絵をクレヨンで書いた。下手だけど描いた。


毎週木曜日、読んであげる。指で文字を追いながら読む。ヨム。

大人の真似をしたがるお年頃。最近では自分で指を差して

「%@#¥&,ワンワン%@#¥3456ワンワン」とお孫ちゃん。

馬もワンワン。猫もうさぎも鳥もワンワン。いいよ、いいよ。

気がつけば自分で字を読めるようになるからね。

自分で本を読む楽しみを覚えるからね。


📕

谷川俊太郎の『おならうた』ないかな。

作者は忘れたけど、『ぐやんよやん』ないかな?

幼稚園児の読み聞かせボランティアをしていたデバネズミ。

園児に人気だった絵本を思い出して、探す。探す、探す。


ない。見つからない。見つけられなかったけど、

一冊の絵本に目がとまり、惹きつけられた。

谷川俊太郎の『生きる』

蝉の死骸を運ぶアリ。公園で遊ぶ子どもたち。

田舎。ひまわり。ホースで水を撒くおじいちゃん。虹。金魚。

団地のキッチン。新聞を読むお父さん。料理を作るお母さん。

おじいちゃんの誕生日。食卓のケーキ。湯呑み。お茶。

夜。畳で寝る子どもたち。扇風機。


昭和の香り、日常のありふれた風景が懐かしくて懐かしくて。

お孫ちゃんの絵本選びを一旦忘れて。

欲しくて……夫に自分用に買って貰った(笑)


🏠

ほとんど人見知りをしないお孫ちゃん。

オモチャ売り場でも、どこでも、誰にでも自分の方から

近づいて手を振る。こんにちはと頭を下げる。

子供に会うとテンション上がって頭を撫でに行く。


嫌いな食べ物が口に入ると怒る。

ダメって言うとキレて泣く。

眠くなるとぐずる。

そういう時は抱っこして、外に出て

鳥の声と虫の音を、山を、稲を刈った田んぼを

ちょうちょを、花を見せに散歩する。

ご機嫌なお孫ちゃん。お昼寝モード。


子守唄を、覚えたての詩の朗読をしてあげるね……。

おやすみなさい。


『生きているということ

いま生きているということ

泣ける、笑える、怒れるということ

人は愛するということ

あなたの手のぬくみ

いのちということ……』


何気ない日常のありふれた風景。

幸年期だわ♡


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