第8話 ホットケーキとランドセル

「今日の夕ご飯何が食べたい?」

「ホットケーキかな」


ホットケーキ? 一瞬思考が止まるデバネズミ。

結婚して二十八年、初めて聞くメニューに戸惑う。


「えっ! お昼ならまだしも夕飯だよ」

栄養偏るね。甘いね。白米ゼロだね。

あり得ないね。それはない。

脳が全否定する私。


話題のニュースが頭をかすめる。


『小学生が開発した散歩セルに賛否両論』


そう、ランドセルが重くて背中が曲がったり猫背

肩こり、筋肉痛を回避するため、開発の

ランドセルがスティックにベルトで固定されキャリー状態。



大人たちはこぞって言う。

ランドセル登校は足腰を鍛えるため。

キャリーにしたら軟弱になる。

不審者に追いかけられたらかえって危険。

ランドセルは転倒した時、頭を守る。

散歩セルの方がバランス悪く、背骨が歪む。


そうね、昭和の根性論で育ったデバネズミ。

毎日、身体に負担の重いランドセルを背負って

片道四十分歩いたわね。重い。馬鹿みたいに重い。

風邪ひいてる時はもう、泣いた。修行。拷問。


開発した子供が反論する。

灯油缶いっとかんを今も毎日背負っている大人が

言うなら許す。重ければタイヤで運ぶのは同じ」

「不審者に追いかけられたら、ランドセルをおいて逃げる」

「そもそもランドセルが重いから転倒する」


確かに! おお、確かに。納得するデバネズミ。


六年生で背負うのと同じ物を一年生でも背負った娘。

重さに堪えて半泣きの時は、車で送ってあげたかったな。

教科書なんか学校に置いてきなさいって言いたかった。

真夏は汗だくで帰宅して、背中から拭いてあげた。


うん、もういいんじゃないかな。

根性論より成長期の背骨の歪みを心配してあげよう。

体育の授業で十分だね。重さから解放してあげよう。


声をあげて、開発した小学生に拍手👏

常識に囚われない発想を尊重しよう。


常識に囚われない、今食べたい物、

ホットケーキを作ってあげよう!


冷蔵庫を開けて、卵と牛乳を取り出すデバネズミ。


相手の事をちゃんと考えるのも幸年期♡

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