第2話 秘密の関係2

  今日もコツコツと自分の仕事をこなす。

1つ仕事が終わり、室内の壁に掛かっている時計を見ると、もうすでに夜6(午後6時ちょうど)を指していた。

艦内の勤務時間は朝5(=午前5時ちょうど)〜夜7までとなっている。

それまでは何も異常がある様子がなく、今日も平和に1日が終わりそうだな……と思ったときだった。


ビィーーーーーーーー!


 突然艦内に鳴り響いたのは、危険を知らせる警報音。

どうやらどこかでトラブルが発生したらしい。


「ヴァリッド補佐!」


 俺のもとに駆け寄ってきたのは、この間入艦したばかりの新人だった。

表情からして、かなり深刻なトラブルが発生したのだろう。


「何の異常が出た?」


「エンジンの異常です! 援護お願いします!」


「了解だ、行こう!」


 俺は新人とともに、エンジン室へと向かっていった。








◇◇◇







 エンジン室は戦艦の中心部にある。

エンジンは戦艦ヴィードのすべてを担う心臓部に当たる。

それが止まれば戦艦が操作できなくなるし、何より照明などの電気関係の機器が全部ストップしてしまう。

 しかも、この戦艦は蓄電池や発電機を搭載していない。

いち早く修理を施さないと戦艦から、ただの漂流船となってしまうのだ。


「原因はわかっているのか?」


「いいえまだ……」


「そうか、なら早急に探し出さないとな!」


「はい!」


 新人と現場に向かい、エンジン室の扉を開けると、普段なら唸っているエンジンの音が全くしない。

言われた通り完全にエンジンが停止してしまっていた。


「ヴァリッド補佐官!」


 俺に駆け寄ってきたのは、エンジン室の管理長を務めているランドロフ・ナキルだ。


「ランドロフ管理長、これは急にですか?」


「ああ、どうやらいきなりベルトが切れたみたいだ。しかし俺と新人だけじゃこの作業は難しい。だから至急援護をお願いしたい!」


「わかりました、すぐに取り掛かりましょう!」








◇◇◇








 1時間かけて、ようやく取り付けが完了した。

エンジンに使われているベルトは分厚くて頑丈な作りになっているため、かなり力仕事だった。


「ヴァリッド補佐官、お陰で助かった! 感謝する!」


「た、助かりました! ありがとうございます!」


 ランドロフ管理長とその新人は頭を下げた。


「いやいや頭を下げなくても結構ですよお2人とも。これも自分の仕事ですから。それでは……」


 俺は2人に一礼すると、自分の作業場へ戻った。

早くティナのところへ行きたいが、エンジンが停止したことを報告書に書かなければならない。

 俺はコピーした報告書を机の上に置き、ペンを取ると枠の空欄に過程をどんどん記していった。

 詳細を出来る限り具体的に書き記すと、艦長室へと向かった。

あとはティナにこれを渡すだけだ。


「失礼します艦長。補佐官ヴァル・ヴァリッドです」


 ノックをし、自分の名前を名乗ってドアノブに手をかけた。

そして、重い扉を開けた。


「――――!? か、艦長!?」


「もう! いつまで待たせる気なの!?」


「え、だって警告音鳴った――――」


 なんと目の前に立っていたのはティナだった。

どうやら随分とご立腹のようで、頬を膨らませている。

 さっきの警告音がティナにも聞こえるようになっているのだから、俺に緊急の仕事があることは知っているはず……。


「良いから早くこっちに来て!」


「おわっと!」


 ティナは俺の服の袖を引っ張って、無理やり俺を艦長室の中に入れた。

そのままソファのところまで連れられ、強引に俺を座らせた。

ゴンッと俺の背中にソファーの背もたれの縁が当たった。


「痛った……。ど、どうしたんだ急に」


「ずっと待ってたのに……」


 ティナは今にも泣きそうな顔をしている。

いやいや、俺にそんな顔されてもなあ……。


「ティナも聞こえただろ? 警告音がなったらだいたいトラブルが起きてるんだから、俺は絶対に現場に行かなきゃならないのはわかってるだろ?」


「そんなことはわかってるよ!」


「――――もしかして俺に会いたくて仕方なかったのか?」


「べ、別にそんなんじゃないから!」


 と、ティナは言っているが、顔と発言が全く一致していない。

顔から火が出るように真っ赤になり、眼はおろおろとしている。

どうやら図星のようだ。


「――――本当に?」


「――――! だから違うって言ってるでしょ! 別にヴァルに早く会いたいからとかじゃないからね!」


 おっと、今日は珍しくツンデレティナさんを見せてくれるようだ。

いつもは俺に甘えてくる彼女が、こんなにツンデレになるのはなかなか見れない光景だ。

でも、これはこれですごく可愛い……可愛すぎる。


「わかったわかった。遅れてごめんなティナ」


「ふ、ふん! わかれば良いのよ?」


 俺はティナに謝ると、ティナは途端にツンデレから甘えん坊モードに切り替わった。

結局俺に会いたくて仕方なかったようだ。

こんな彼女も俺は好きだ。


「――――ヴァル、明日何の日か知ってる?」


「もちろん分かるよ。俺たちの記念日だな」


 俺たちの記念日、つまり俺とティナが恋人同士になってから明日でちょうど2年目になる。


「もう2年経つんだって……」


「もうそんな経ったのか……。よくみんなにバレずにやってきたよな」


「本当……。これだけ堂々とこの部屋でこんなことしてるのにね」


「まあ、この部屋には俺くらいしか出入りしないしな」


「そうね……。わたしはヴァルと出会えて本当に良かった……。もしあの時ヴァルと出会ってなかったら、今のわたしはいないかもしれないし」


「俺もティナに出会わなかったら、ここにはいなかったし、これだけ幸せな暮らしをしていなかったよ。だからティナには感謝してもしきれないし、これからもティナを大事にしていきたいんだ」


「そ、そんなことないよ……」


 ティナは顔をほんのり赤くして俺から視線をそらした。

俺はティナの頭を撫でてあげると、彼女はゆっくりとこちらを向く。

この瞬間に映るティナの顔がとても可愛くて、美しくて大好きだ。

俺とティナはお互い顔を近づけて、唇を重ねた。


「――――ん」


 相変わらず、ティナから色気たっぷりの吐息と小さい声が俺の耳に届く。

俺の本能を誘ってくるようだ。

 本当にティナはズルいと思う。

可愛いし、美しいし、性格も良いし……悪いところがほとんど無い。

 1つ悪いところを上げるとしたら、俺に甘えん坊すぎるくらい。

艦長という階級に立ってなかったら、ティナは多分ずっと俺に付きまとって来るんじゃないかと思う。

まあ、俺は全然良いけどね。

その方が俺がやる気出て仕事捗りそうだし……。


「――――はあ、はあ……ヴァル寝転がって」


「い、良いけど……」


 今日のティナは何か変だ。

いつもなら俺がリードする形になるが、今日はやけに積極的だ。

ティナがリードする形なんて1度もない。

とりあえずティナの言う通り、ソファーの上で寝転がったが一体どうなってしまうんだろうか……。


「ヴァルにはいつもこういう景色が見えているんだね」


「まあ、そうだな」


「無防備のヴァルが見えてる。ふふ……なんかいつもと違うヴァルが見れて……すごい興奮してくる……」


 ティナがどんどんだらしない顔に変わってきている。

口から涎が垂れそうになっていて、目もとろんと酔いしれたようになっている。

なんだろう、いつもより立場が違うからすごくドキドキする。

なんだか俺も興奮してきた……。

 するとティナは俺の腹の上に乗っかって来た。


「どう? 女の子に馬乗りされる気持ちは……」


 ティナは俺を見下ろしながらそう言った。


「すごく良い……。ティナも積極的になったりするんだな」


「だって、ずっとヴァルのこと待ってたんだもん。こうなった以上、もうわたしのことを止められないってこと覚悟してね……」


 そう言って、ティナは俺の制服に手をつけ始めた。

第1、第2ボタンを開けると、ティナも自分の制服のボタンを開け始める。

すると、ボタンが開いた所から少し膨らんだ、白くて綺麗な肌が少しだけ見え始める。


「ヴァル……わたしちょっとだけこういうの平気になってきたの。ヴァルは早くこういうのしたかったでしょ?」


「ま、まあ……。でも無理はしないでほしい」


「ヴァルってそういうところは慎重になるよね。男の人って普通そういうのはすぐに食いつくものだと思うんだけど」


「大体はそうだけど、俺はそうじゃない。恋愛っていうのは体を求めるのが全てじゃないし、それだけの関係じゃうまくいかないって思ってるんだ。それよりももっと大切なことがあるんじゃないかっていつも俺は思ってるよ」


「――――」


 確かに肉体関係を持ってそこから良い関係になった話とかは聞いたりするけど、俺なりの考え方はコミュニケーションが第一と考えている。

そうしないと、今後も相手のことがよくわからないままになってしまう。

最初は肉体関係を持って満足していても、あっという間にそれは満たされなくなってしまう。

もしかしたら相手はそれが嫌だけど言い出せないだけかもしれない。

 くだらない話でも良い。

仕事での失敗談とか、自慢話とか……そんな些細なものだけでも、ちゃんと会話は成り立つ。

そういう経緯を通していくことで、お互いのことをもっと知れて愛が深まる……と俺は勝手に考えている。


「そういうところがわたし好きなの」


「――――!」


「ちゃんと相手のことを気遣ってくれるんだもの。艦員に対してもそうだし、わたしとこうやって2人きりの時もそう。こんなに我儘で甘えん坊になってるわたしにも、優しくしてくれるところがヴァルに惹かれたところの1つだから」


 そう言って、ティナは俺の頬にキスをした。

彼女はほんのりと顔を赤くしながら俺を見つめる。

ああ……俺はなんて幸せ者なんだろうか。

ティナに出会わなかったら、俺はずっと彷徨さまよい続けていただろう。

だが今はこんなに可愛い恋人が隣に居てくれるし、仕事も充実している。


「俺も好きだよティナ。ティナが居てくれるから俺は毎日頑張れる。それと……ティナに惹かれた理由は俺にだっていっぱいあるんだ」


「――――もう、ヴァルは不意打ちしてくるところがズルい」


「それはティナも同じなんじゃないか?」


 俺とティナはお互い笑った。

結局、俺たちは似たもの同士なんだろうなってつくづく思う。


「――――さて、ティナはこれからどうするんだ?」


「今日は大胆に行かせて。遅刻してきた分覚悟してね?」


 そう言ってティナはまた俺に唇を重ねた。

舌が絡み合い、お互いの愛を確かめあった。

そして、ティナは自分の制服の残りのボタンを全て外し、前を開いて俺に見せた。

小さめな2つの膨らみと、細くてスレンダーなお腹が露わになる。


「今日のティナは、随分大人だな」


「まだまだこんなもんじゃないよ? もっと、もっとヴァルと一緒に大人の階段を登って行きたいの」


「――――ティナもそういうことを言うようになったのか……。わかった、ティナがそう言うなら俺も付き合うよ。どこまでも」


「んっ……」


 俺はゆっくりとティナのお腹に触れた。

彼女は体をビクリとするが、お腹を擦られるのがとても気持ち良いようで、はあはあと色っぽい声を出し始めると、ティナは俺の首筋を下から上へと舌で舐めていき、また俺の口の中に舌を入れてきた。


「ティナ、愛してるよ」


「うん、わたしもヴァルのこと愛してる!」

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