第5話

 息を切らして目を開くとそこは薄暗い見慣れた自室だった。早鐘を打ち続けていた心臓が痛いくらいだ。寝汗で寝巻がぐっしょりと濡れている。

 今日もまた僕は夢を見ていたらしい。

 部屋のカーテンを引く。辺りはまだ薄暗かった。

 二度寝しようともあんな気味の悪い夢を見たばかりだ。また同じような夢を見るなんてことは避けたい。僕はいまだぼんやりとしている頭を起こすために顔を洗いに行った。

 洗面所の鏡をのぞき込むと死んだ魚の目をした男の顔が映っていた。僕の顔だった。

 しかしなぜだろうか。その一瞬、僕は見慣れたはずの自分の顔に謎の既視感を抱いた。

「…ああ、そっか。あの時見たのはこの顔だったのか」

 無意識のうちに言葉にしたそのつぶやきの意味もまた僕にはわからなかった。既視感に対する納得と何に対するつぶやきか。

 胸中に理解ができないがどこか腑に落ちるという違和感がこびりついてなんだか気持ちが悪い。

 旅人の腕にはブレスレットが怪しく光っていた。

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