第33話 戦い

「よくわからないけど……悪い狐が、日本に王様を生み出そうとしているって事?」


「うむ、その通りだな、リズム」


 そんな2人の会話に「ちょっと、将門くん」と道真が話を挟んだ。


「いいの? 話、適当すぎない? 最初に僕ら悪霊って明かしてるけど?」


「むっ……」と言い淀む将門だったが、リズムは――――


「2人とも悪い幽霊なんだよね?」


「あれ? リズムちゃんは僕らの事を知らない?」


「しらない……」


「僕は菅原道真。君の体に入っているのは平将門だよ」


「しらない……」


「それは妙だな」と将門。


「俺はともかく、道真は知っているはずだろ? 高校受験の時、太宰府天満宮の鉛筆は必須……今は違うのか?」


「わたし、高校に行ってないの」


「それは不登校とかではなく、最初から……中学から進学してないと意味か?」


「それって、そんなに不思議? みんな高校生になるが当たり前じゃないと思うけど?」


 リズムは淡々と述べる。


「わたしは中学生の頃から格闘技で稼げた。あと10年戦えれば、蓄えは完璧。一生安泰」


 彼女は、こう付け加えた。


「だから、楽しみ。2人と戦うためにわたしの体を選んだのでしょ? それじゃ、行く場所は――――」


 彼女……それと人には見えない2人の目前には門。


 校門だ。 正道翔と鳥羽あかりがいる学校の前だった。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


 時間は、放課後だった。


 翔は――――


(なんだ、今の感覚は? 総毛立つような寒気……)


 自然と窓を見る。 視界には校庭……歩いている少女が1人。


(……1人? 何か、どこかおかしい。 ――――3人いる?)


 この時、翔が行った行動は衝動的だった。


 窓を開けると、3階の高さから飛び降りた。


 着地の衝撃を緩和するために前転。


 回転を数回。


 その後、何事もなかったように立ち上がるとリズムの前まで歩きだす。


「正道翔……君は?」


「皆月リズム……戦いに来た」


「君、強いね。構えでわかる……というか、普通の人は構えないよ」


「貴方は構えてない。でも、構えてないのが構え」


「凄いね。わかるんだ」


「武道系の人?」


「そうだよ」


「それじゃ、いきなり襲い掛かっても問題ないよね?」


「問題ないわけじゃないでしょ? いや、俺は別に良いんだけどね……狙いは、鳥羽あかり?」


「……その名前はターゲットの1人。もう1人は貴方」


「そう、ちょうどよかっ――――」


 最後まで言えなかった。 


 リズムのジャブが翔に襲った。   


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る